アラフォーのわたしはいま、東京で一人暮らしをしている。

仕事を退職し、好きな絵を自由に描きながら、

無職である今現在の不安と、どんな未来があるのかという楽しみと、

眠れない夜に、ふと過去の恋に思いをはせてみた。

恋に、生き方に自分を見つめ、詰まりを取り除くためにすこしだけ

わたしの恋をつづってみようと。

きっと大丈夫だよ、と自分に言い聞かすために。

誰かに読んでほしいのかもしれない、自分のためにただ書こうそう思った。

 

わたしは恋愛というものは、ほんとうにほとんどしてこなかった。

それでも、片思いをすることはたくさんあった。

大好きだった彼に思いを伝えられなかった、そんな臆病者の恋の話。

ストーリー01は初恋。

 

わたしは田舎で育ち、働き者の優しくてあったかい元気いっぱいの父、

優しくてかわいくてたくましい母、いつも味方でいてくれる大好きな姉の4人家族。両親はとても貧乏で2人とも中学を卒業してから働いてきた。

私にとっては立派すぎる両親。苦労などさせられることもなく、むしろ旅行に毎年何度も連れて行ってくれるほど、たくさんの幸せな時間を共に過ごした。

今振り返ると、幸せすぎる家族との時間を過ごしていたことを思い出す。

 

わたしは田舎の小さな町で育ち、保育園から中学校までみんな小さいときからずっと一緒。1クラス30人ほどで学年で60人いないくらいの規模の大きさだった。

みんなの名前はもちろん、もはやほかの学年も名前を覚えられるくらいだった。

いつからだろう、正確に思い出せない、、、わたしは彼のことが好きだった。

ほんとうに大好きだった。

彼は学年の中でも目立つ人だった。スポーツもできて、面白くて、勉強もできて、背も高くて、いわゆる学年でもモテるタイプの人だったと思う。

恋心にはっきりと気づいたのは小学校5年生。

バレンタインにチョコレートをあげるときだった。

今思えば、それが最初で最後のチョコレート。

もしかしたら、その時が一番自分の気持ちに正直だったのかもしれない。

ちゃんと好きな人に、買ったチョコだけど渡すことができた。

告白とかなんてなくて、ただチョコを渡したことを覚えている。

手作りなんて重たいし、そもそもお菓子作りをするような女子でもなく、どちらかというと男の子のように活発に体を動かして遊ぶ子だったから。

手作りチョコなんて渡したら、周りにどう思われるのかを絶対に気にしていた。

 

最後のチョコになったのには、もう告白なんてする前から失恋をしていたからだ。

彼には好きな人がいた。

彼の好きな子も、彼を好きだった。

そこに入る隙間なんて、これっぽっちもなかったからだ。

そして彼の好きな子は、わたしの地域に住む唯一の女の子。

ほんとうにわたしと彼女の2人しかいなかったのだ。

中学の3年間は、彼女と毎日一緒に登下校した。

やさしくて、かわいくて、ノリもよくて、わたしも彼女のことが大好きだった。

神様は、なんというイジワルなんだと今は思う。

大好きな人の好きな人が、こんな距離にいるのだから。

大切な友達なのだから。

 

まるで少女漫画のように、主人公には絶対になれない脇役のポジションに

わたしは立っていた。脇役ですらないのかもしれない。

中学生の時に付き合うことになった2人。

わたしは大好きな彼女と、大好きな彼を応援すると心に決めた。

自分の気持ちは胸の奥にしまった。

胸の奥の奥の箱の中に思いを閉じ込めて、鍵をかけた。

苦しかった。すごくすごく苦しかった。

2人の姿を見て、おめでとうの思いと苦しさで胸が締め付けられた。

わたしの思いはのどから出すこともせず、我慢し閉ざし、思いを伝えるという

行為さえも自分自身で封印をしてしまったのだと思う。

 

高校に入って、2人が別れた話を聞いた。

複雑な思いだった。

言葉に表せない、悲しいのか、嬉しいのか、怒りなのか。今でもわからない。

彼とは違う高校だったが、何度か帰りのバスが一緒になった。

わたしは高校1年のとき、学校になじめず心が寂しさで悲鳴をあげていた時期だった。人を信用することもできなくなり、一人でいようと決め孤独と戦う学校生活をしていた。

バスを降りる駅は一緒だった。だから本当は彼と話くらいしたかった。

そんな勇気は一切ない心の状態で、一度も振り返ることをせずに。

話していたら辛く苦しい時期が、ほんの少し楽になったのかもしれない。

大好きだった人なのに、あの時少しだけ話ができていたらと本当に後悔している。

 

月日は流れ、成人式ぶりや中学校卒業ぶりなど6年ぶりや10年ぶりの同窓会。

そのころは、一度地元に帰って働いていたから気軽に参加できた。

彼と偶然にもはなぜか同じ赤の服を着ていたわたし。

服の色が同じだけで嬉しいなんて、わたしはほんとうにバカだな。

時が流れても好きな人は、永遠に好きなのだと気づかされる。

同窓会では、もう時効ってことで全員好きだった人を言うという流れの話が出た。

わたしの思いは箱の中にしまったまま、しまったままにしたい。

自分の番が近づくとトイレに逃げたことを覚えている。

彼は席に来てくれて、乾杯と少し話をした。

彼の顔をすごくすごく久しぶりに近くで見た。昔とは違う、大人になった顔の彼。

来てくれて話ができて本当に嬉しかった。

わたしの名前がめずらしいこともあり、○○〇でなんかやっちゃいなよ~。

と彼は何気なく言った。
わたしはその言葉が、すごく嬉しかったことを覚えている。
わたしに何ができるかなんて、わからなかったけど、なにかしたくて、なにものかに
なりたくてもがく日々が始まっていたのだから。
彼はわたしがなにかしたいそんな人物に見えたのだろうか。
 
それから4年ほどだろうか、私の同級生でもある彼の友人から、彼が結婚する連絡が入った。友人のグループの中で最後に結婚する大切な彼の結婚式は、本当にお祝いしたくてと連絡をくれた。ほんとうに仲間想いですてきな友人、友人は彼の親友だ。
自分の写真を撮って友人に送った。
きっと、すてきな結婚式になったに違いない。
彼の結婚は、わたしも嬉しかった。幸せになってほしいと心から思った。
 

それから2年ほど経ったある日、彼の親友は事件に巻き込まれてこの世を去ってしまった。わたしは友人と同窓会で会い、お祝いの写真を送ったことが最後のやり取りとなった。突然のことすぎて、みんなのことも心配になった。

彼は大丈夫なのか、本当に心配になった。

同級生の何人かと連絡を取った。

彼は泣き崩れていたと聞いた。

恋人でも何でもないけど、ただの同級生だけど、彼を傍で抱きしめてあげたいと

思った。思うだけで、なにもできない自分。わたしは彼になにもできないのだ。

遠方にすんでいた私は、すこし期間が空いてから亡くなった友人の自宅に線香を上げに向かった。ただただ、信じられない時間を過ごした。

友人の話をしながら、信じたくない気持ちで涙だけが流れる時間だった。

友人の彼はもうこの世にいない。

まだ若かった友人には、心残りのことだらけだったと思う。

彼の分も頑張って生きようと思うのには、少し時間が必要だったことを思い出す。

 

時は流れている。

みんなともう会うことはないのかなんて、わからない。

大好きだった彼にも、もう会うことはないのかもしれない。

彼がどこかで笑顔で過ごしていることを願っている。

 

彼への思いを胸の奥にしまい込んだことに、後悔がないと言ったら嘘になる。

答えが分かっていても、気持ちを伝えるということが大切なのだと。

わたしの喉に詰まったままの思いを、今ここで伝えよう。

 

あなたのことがだいすきです。

昔も今も変わらぬまま。

夢でもいいから、あなたと抱きしめあいたいほどに。

 

なにもできなかった初恋。

あの頃の自分を許して。

あの頃の自分、よく我慢したね。

よく頑張った。

臆病者の自分に向けた、わたしの初恋

 

ありがとう。