その様子を見ながらジョルジュは神妙な口調で話題を変えた。

「しかしどこのどいつかわからんが、いったい、どこの誰が。――誰かが仕組んだにちがいないんだが」

顎の先をつまみながら、事件の真相について、やっと話題にした。

「よもや、と思うが・・・」

分かっていた。あの時の声から、首謀者がダニエルだと。ジョルジュはとんだ贈り物をしてくれた、とは思わない。兄よりも父の決めたことだ。イザベルがそれに同意せざるを得なかったことも、時代性や、わたしの奔放さのせいでもある。

「お前が連れ去られたと聞いて、行方を捜していたんだが、大方やったのは悪ずれの司祭どもだろうことは察しがついた。リンチにかけることを無上の喜びにしているからな。だが、依頼した奴が見つからない。心当たりはあるか?」

わたしは、無言でジョルジュを見た。

「そうか。それにしても教会の下っ端どもは」憤慨に堪えないよな口気で吐く言葉だった。「汚い噂を流布させたり、拘束して抵抗できないようにしておいて虐待し、なじり、卑しめる。自分を神聖だと、絶対の真理の担い手だと、間違いのない善良なものだと信じ込んでいる者ほど、残虐なことを平気でやりやがる。まったく皮の薄い野郎どもだ。陰に隠れてコソコソと。そうしておきながら、『調子のいいことばかり言うやつが裏で何をやっているかしれたもんじゃない』などとほざき監視の目を差し向けやがる。本性がそうなのは、奴らだ。

ひとを疑ってかかる奴は誰を根拠にしている? 自分自身だ。“善いこと”を押し通すために、この世のものとは思えないほどの残忍さを思いつく。騙されまいとして他人を騙す。あざむかれまいとして他人をあざむく。人間の本性は悪で汚いと信じ込んでいる者ほど、そう行動する。汚さを出すまでいたぶり苦しめ、なぶり殺す。それがこの頃流行りの〝証明〟というやつだそうだ。証明と言うなら、奴らが何をしているか、あの忌まわしい“魔女裁判”が全てを物語っているではないか」うなだれて首を振る。

首謀者はダニエルだと告げたら、ジョルジュはどう反応するだろう。余計なことをさせないためにも、そして幸いに告げる手段をなくしている今、知らないことにしていた方が賢明に思えた。顔をあげ、ジョルジュは続けた。

「嫌疑をかけ、“真実”を白くまでそしり、なじり、じりじりと痛めつける。土地や所有物のない時には、ひと思いに殺してしまわずに、半殺しにして叩き出す。その行為の裏で奴らの高笑いが聴こえてくるな。不具のまま生き地獄を彷徨う囚人を想ってあざけり笑う。苦しんでいるさまを想像して喜ぶ。なんて汚い奴らだ。聖職者とは人非人の別称か?」

わたしはぼんやりとあの暗くて血生臭い地下室を思い出した。