菅官房長官の肝煎り事業と思われる非防災ダムの活用による防災計画については過去記事［新規ダムではなく既存ダムの活用を］から何度か取り上げましたが、昨年の台風19号を切っ掛けとして始まったこの取り組みも全国で約100の水系で調整を終えたとのことです。

この治水協定の肝となる部分は大雨が想定される場合の事前放流です。大雑把に説明すると、大雨が来る前に水を放流してダムの水位を下げておけば、いざ大雨が来たときに治水能力を底上げすることができるということです。

©️京都新聞

今般の梅雨シーズンでは長野県の木曽川で事前放流が行われ、木曽川の水量を2割減らすなど実績を残していますが、球磨川の大雨では事前放流の判断が間に合いませんでした。この非防災ダムの活用により利根川水系で八ッ場ダム３個分、全国では八ッ場ダムの５０個分の洪水対策の水量を確保することができたとのことですが、あくまで運用によって『可能になった』だけで実行されなければ意味がありませんので、ガイドラインを見直し、早急な事前放流の判断が可能になるようにすることが必要です。

さらには、ＡＩを活用した降水量予測や個々のダムの放流量コントロールなどの対策を組み合わせ、事前放流の効果を高める取り組みを進め、事前放流に加え、河川の浚渫（しゅんせつ＝水底をさらって土砂を取り除くこと）、堤防や遊水地の整備、ハザードマップの活用なども進めていくとのことですが、例えば球磨川の氾濫は事前放流やその他の取り組みだけでは防げなかった可能性が高いです。

新ダムの建設には時間も費用もかかりますので既存設備の活用が最優先ですが、既存設備だけでは災害を防げないような地域においては新たなダムの建設も検討してほしいと思います。

台風シーズンへの備え／ダムの運用と建設の平行検討を