バイデン政権発足/国際協調主義への転換もTPP加入はイギリスが先行 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

昨日アメリカでバイデン政権が誕生し、その日のうちにパリ協定への復帰とWHO脱退撤回など15もの大統領令に署名をしました。

バイデン氏、大統領令に次々署名 「パリ協定」復帰など


但しやはりトランプ前大統領による象徴的な政策であるTPP脱退については慎重な姿勢のようです。
バイデン新政権、単独行動主義から協調姿勢へ転換 TPP復帰は慎重 中国包囲網で足並みの乱れも


もちろんTPPに加入しないことと対中包囲網に加わらないことは同義ではなく、むしろ過去記事[中国がTPPに前向き姿勢/アメリカのTPP不参加が対中包囲網の要に]に書いたとおり、長期的視点では
USMCA(改正NAFTA)の規定からアメリカがTPPに加入しない方が中国への牽制を強めることになります。

日本の対米経済協定という視点からも、日米FTA交渉第一段(日米TAG)でアメリカの拡大通商法第232条を封じ、更にブラジルの牛肉輸入解禁というカードを保有する
日本はアメリカとの単独交渉でも優位に立てるため、アメリカのTPP加入にこだわる必要性は薄いと言えます。実際にアメリカUSTRのライトハイザー代表がUSMCAには盛り込まれた為替条項を日本に要求しないことを明言するなど、明らかに日本に配慮した対応となっています。
参考:【過去記事】「アメリカはTPPに入らない。中国がTPPに入る」/日本外交の強かさ


こうして見るとアメリカのTPP加入は日本にとって何らメリットのない話に思えますが、サプライチェーンの観点からはメリットがある話になります。
特にUSMCA(改正NAFTA)によって、日本がメキシコへ自動車部品を輸出し、メキシコ内で組み立ててアメリカへ輸入するという一種の加工貿易が制限されることになりましたが、アメリカがTPPに加入すれば事実上これが全面的に解禁されることになりますので、日本の自動車部品メーカーにとっては死活問題と言っても過言ではありません。
流石に今更TPPお化けで騒ぐ人もいないでしょうが、USMCAが発効した後ではアメリカのTPP加入の影響はサプライチェーンにほぼ限定されるため、『極めて重要』とまでは言えないかと思います。


その一方でイギリスのトラス国際貿易相は20日にTPPについて「近くこの自由貿易圏への参加を正式に申請する」と表明しており、こちらは順調に進んでいるようです。
アメリカがTPPに復帰するより前に、イギリスがTPPに加入することになりそうですね。