今年は中国を中心とする経済協定であるRCEPが署名まで進みました。TPPの参加国のうちアジア・オセアニアの全ての参加国がRCEPに参加するなどこの二つの協定には大変多くの重複が見られますが、この二つの協定は実質的に中国経済圏と非中国経済圏という非参加国を含めた勢力争いの構造となっています。中国がTPPにも参加することでWTOのように機能不全を起こすようになれば、オバマ前アメリカ大統領が言っていたように「中国が世界経済のルールを書く」ようになりかねませんので、中国の動向には常に注意しておかなければなりません。
私はその中国への最大の牽制は『台湾の参加』だと考えています。
中国はTPPにまだ参加していないにも関わらず、過去記事[TPPの盟主として日本は中国の認識違いを示せ/友好国台湾の苦境]にも書いたとおり、すでに台湾のTPP参加を牽制するなどTPPへの干渉を行い始めています。TPPへの参加資格は『独立した関税地域』でありさえすればよく『主権を有する国家である』必要はありませんので、本来『一つの中国』に最大限配慮しても何ら台湾の参加を拒む理由にはなりません。ただし中国の意見表出によって萎縮して台湾の参加を拒む国が出てくる可能性は否めません。というよりもそれこそが中国の狙いでしょう。
TPPへの新規加入は全会一致が必要であり、逆に台湾の参加が成れば中国の参加は一層厳しくなります。台湾のTPP参加めぐる日本の姿勢は「オープン、歓迎」であるという記事もあり、台湾もTPP参加を前向きに検討している国の一つです。日本は事実上TPPの盟主であり、そして2021年は議長国でもありますので、是非ともこの機に台湾のTPP参加を積極的に進めてほしいところです。
なお前述のとおりTPPへの加盟は全会一致が必要ですが、その『全会』とはあくまでも批准国に限定されます。現在のTPPはTPP11と呼ばれますが、現時点の批准国はメキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア、ベトナムの7ヵ国であり、11ヵ国全ての承認を得る必要はありません。
中国がその影響力を強めつつあるのは東南アジアが中心であり、現在の批准国ではシンガポールとベトナムに限定されると言っても良いでしょう。TPPは参加国の批准が中々進まないことが一つの課題でしたが、逆に言えば新規参加のハードルが低いということでもあります。東南アジアで影響力を強める中国に対抗するために、マレーシアやブルネイといった他の東南アジア国が拒否権を持つ前に台湾の参加を進めるというのは非常に有効な戦略かと思います。
中国の参加に対しても当然ながら「例外扱いはしない」と明言しているように、もちろん一つの国のためにルールを変更することはできません。
もちろん過剰な緩和は禁物ですが、そこの配分は盟主であり議長国でもある日本が最も政治的に融通を利かせられる部分ではないでしょうか。
冒頭に書いたとおり2021年のTPPは激動が予想され、2021年の動向次第でTPPの方向性が決まってしまうかもしれませんが、その年に日本が議長国であるのは僥倖と言えます。
中国への牽制のためにも台湾の参加を積極的に働きかけてほしいと思います。