コロナショックによる買い手市場は人手不足倒産を緩和できるか? | 上下左右

上下左右

台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

コロナショックにより有効求人倍率が下がり続けています。
2019年12月 1.57倍
2020年1月 1.49倍
2020年2月 1.45倍
2020年3月 1.39倍

日本の雇用統計ではまだ3月分までしか判明していませんが、緊急事態宣言が発令され自粛要請が厳しくなった4月以降はこれ以上に悪化していくと予想されます。有効求人倍率が低下しているということは人手不足が緩和され、いわゆる『買い手市場』で雇う企業側が有利な状況となります。
近年有効求人倍率が上昇し続け、人手不足倒産が増えているとよく聞くようになりましたが、コロナショックによる『買い手市場』の到来で人手不足倒産は減少するでしょうか?

東京商工リサーチの「4月人手不足関連倒産」によると、2019年に過去最多の426件を記録した「人手不足」関連倒産は、2020年に入っても増勢が衰えず、1~4月は190件と前年比1.6倍のペースで推移しているようです。
その190件の内訳を見ると、「後継者難」が142件(前年同期比100.0%増、前年同期71件)、「求人難」が22件(同15.3%減、同26件)、「従業員退職」が15件(同36.3%増、同11件)、「人件費高騰」が11件(同10.0%増、同10件)となっており、「後継者難」が約75%と圧倒的な割合を占めています。

よく『人手不足倒産とは高い賃金で雇う資金がないだけで資金ショートによる倒産と変わらない』という意見を目にしますが、人件費の高騰を理由とする人手不足倒産の割合は12%程度と決して高い割合ではありません。今年に入ってからは特に「後継者難」による人手不足倒産が増えていることから、コロナショックによる失業者や新規求業者が増えたところで人手不足倒産の増加に歯止めがかかることはないでしょう。
今年はコロナショックによる倒産に加え、人手不足を原因とする倒産も過去にないペースで起こることになるため、雇用状況の大幅悪化は避けられないことになりそうです。