「おい、カズキ」
ふと、ここでジリジリとゾンビに近づくカズキに話しかける。
チェーンソーを構えるその様子は何というか殺人鬼を思わせるが、その辺に関しては触れないでおこうと思う。
「…なに」
「お前、アレをどう思うよ?」
「アレ?」
「あのゾンビ」
「………さあな」
ウー、ウーと唸りながら、しかしこちらからは攻撃してこないゾンビは何やらこちらの様子を伺っているのだろうか。
何故攻撃してこない?さっきは襲いかかってきたというのに、こちらから銃を発砲したらまるで大人しくなってしまった。
攻撃されるのを恐れているようには見えないが、何か相手に思惑があるのだろうか。
いや、まさか。ゾンビが?
「俺がアイツを引き付ける。その間に、お前は背後に回って勢いよくやれ」
「お前が?やれんのかよ」
フブキはあくまでも狙撃専門だ。近距離でも戦えないことはないが、一呼吸一呼吸の短い戦闘となれば彼の良さは途端に半減してしまう。
無音が包み込む世界こそ、フブキの力を最大限に引き出せる状況なのだ。
カズキは近距離の方が向いているため、むしろ引き付けるのを自分にやらせた方が良いのではないか、と思ったのだろう。だからこその「やれるのか?」なのだ。
「問題ないさ、俺に任せとけ」
「…お前が言うなら」
それだけ言えば、カズキは自分よりも背後で構えるコースケとアスカに顔を向ける。
何の会話をしていたのか気になっていたらしい2人は既にこちらを見ていた。カズキは2人と目を合わせるなり、口パクでこう言った。
ば、ら、ば、ら。
すると、コースケとアスカは互いに目を合わせ、そのまま目を合わせればコクリ、と頷く。
直後、2人は左右正反対に分かれ動き出した。その速さたるや、まるで獲物を追い求める獣のよう。
「行くぞコラ」
「おうよ」
そして、2人を見送ったのち、カズキとフブキは短くそう会話して。
タッ、と力強く地面を蹴り、行動を開始した。
カズキがゾンビの目と鼻の先まで迫る。フブキがカズキから少し離れると、大回りにゾンビの背後へと走っていった。
「クソゾンビ、こっちだ!」
コースケがマチェットを上から下へ降り叫ぶ。にかっ、と笑うその表情には余裕の色が浮かんでいた。
「…背中がガラ空きだな」
アスカがメリケンサックをギュッと握りしめ呟く。小さくピョンピョン跳ねながら、タイミングを伺っていた。
とはいっても、攻撃を仕掛けるつもりなど毛頭ない。こちらが攻撃を仕掛ける時は、”残りの2人”の作戦が失敗に終わった場合だ。
「行くぜ、オイイイ!!」
そして、カズキの高らかな声と、チェーンソーのギュイイイイイン!というモーター音と。
ゾンビがカズキの方に顔を向けるのは、ほぼ同時だった。
「(よし、ここから…!)」
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