感染拡大ペース、今春に近づく
厚労省の助言組織が憂慮
新型コロナウイルス対策について厚生労働省に助言する専門家組織(アドバイザリーボード)の会合が6日あり、一部地域での急速な拡大に伴い、感染拡大の速度が3、4月のときに近くなっているとして、「憂慮すべき状況」と評価した。
・2020年8月9日までの日本の累計感染者数の推移
・2020年8月9日までの日本の感染者増加数の推移
・2020年8月9日までの日本の累計感染死者数の推移
・2020年8月9日までの日本の感染死者増加数の推移
・2020年8月9日までの日本の重症感染者数の推移
・2020年8月9日までの日本の入院中・療養中感染者数の推移
保健所や医療機関の対応にはすでに悪影響が生じ、
一部地域で医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する懸念が見られるとし、
「新規感染者数を減少させるための迅速な対応」を求めた。
7月30日の前回は都市部を中心に増加しているが「3、4月のスピードより緩慢」としていた。
感染者急増の地域について、会合後の会見で座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は
東京、大阪、福岡などを挙げたほか、「沖縄はかなり急速な拡大だと認識している」と述べた。
会合の資料によると、1人の感染者が何人に感染させているかを示す実効再生産数は7月18日時点で
首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木)は1・1、
中京圏(愛知、岐阜、三重)は2・0、
関西圏(大阪、兵庫、京都、奈良)は1・5、
九州北部(福岡、佐賀)は2・1となっている。
厚労省の集計によると、8月5日までの1週間で、
人口10万人あたりの新たな感染者数は7・33人で前週の1・5倍。
感染経路が不明な割合も7月31日までの1週間は前週とほぼ同じ52%だ。
検査が十分行き届いているかの目安になる陽性者と検査数の割合
(陽性率)も直近は6・7%と7週連続で上昇している。
コロナ検査能力、30都道府県でなお不足 感染急増懸念
新型コロナウイルスのPCRなどの検査について、厚生労働省は7日、都道府県が推計した今後の流行時に必要となる1日あたりの最大検査件数は、全国で計約5万6千件にのぼると発表した。
朝日新聞の調査では、検査可能な件数は4月の流行時と比べて大幅に伸びているものの、7月末時点で、少なくとも30都道府県が最大想定を下回っていた。
厚労省は6月、検査体制の強化が欠かせないとして、3~5月の国内の流行時の患者数、重症化率、入院日数などをもとに患者の推計モデルを提示。それに基づき、都道府県が流行時に必要な最大の検査数を推計し、必要な体制を整えるよう求めていた。
厚労省によると、最大検査件数の推計は計5万5933件(豪雨災害の影響で熊本県は含まず)。
朝日新聞が各都道府県に7月末時点での検査能力を聞いたところ、回答があった46都道府県で計4万2203件(民間検査機関の活用を含む)。4月7日に東京都などに緊急事態宣言が出た時点の検査可能件数の1・1~23・9倍と、各地で検査能力は強化されていた。
ただ、7月末時点で検査可能件数が、推計された最大必要件数以上だったのは15県。
今春の流行時には、検査能力の限界のためにPCR検査を受けられない例が頻発したが、感染者が急増すると今後も同様の事態が起こる懸念がある。
厚労省は、機器の導入などにより9月末までに全国で最大計約7万2千件のPCR検査や抗原検査ができるようになると見込む。
だが都道府県への取材では、全国の自治体が一斉に機器導入を目指していて納期が遅れているケースや、機器の検査能力はあっても、1日に検体を採取できる数が限られる自治体もあり、備えには課題が残る。
厚労省の担当者は、現状で検査能力が足りていない自治体について
「民間機関などへの外部委託や近隣の自治体との連携で対応してほしい」と求めている。
1日当たりのPCR検査などの体制
最大推計 検査能力(7月末時点)
北海道 2620 1800
青森県 375 403
岩手県 444 504
宮城県 1162 448
秋田県 333 100
山形県 300 300
福島県 705 570
茨城県 1100 500
栃木県 900 453
群馬県 432 432
埼玉県 3343 1606
千葉県 2794 2006
東京都 10971 8600
神奈川県 3710 3950
新潟県 450 216
富山県 510 230
石川県 340 230
福井県 313 326
山梨県 382 260
長野県 1040 1040
岐阜県 500 542
静岡県 827 1246
愛知県 1820 1472
三重県 640 580
滋賀県 720 196
京都府 1500 538
大阪府 2669 2000
兵庫県 1931 1190
奈良県 467 717
和歌山県 659 716
鳥取県 1000 196
島根県 400 90
岡山県 693 280
広島県 1573 1900
山口県 734 310
徳島県 500 232
香川県 308 552
愛媛県 350 192
高知県 378 216
福岡県 2000 2300
佐賀県 490 400
長崎県 872 634
熊本県 ― 710
大分県 675 284
宮崎県 357 362
鹿児島県 686 374
沖縄県 960 ―
(―は未回答。最大推計は厚生労働省発表。
検査能力は朝日新聞集計)