居間のソファに自分の家にいるようで、カエール侯爵と同じ薄い金髪の細身の上品な雰囲気の男が座っていた。カエール侯爵もジャン将軍もその貴族的な雰囲気があるが、侯爵と将軍のどこか軍のにおいがする。ソファに座る男は自分が動かなくても、周りが動いてくれると思っているような貴族の息子だと感じられる。
「お久しぶりです、兄上」
「久しぶり。お前の手紙を読んだら、飛んできたが、そこまで急ぐ必要なかったなぁ。葬式はいつ?」
「明日です。急がせて、すみませんでした。兄上と話さないといけないことがありまして」とカエール侯爵は向かいのソファに座る。
「本家の跡継ぎのことだろう」
「その通りです」
「お前継げばいいのでは?」
「ワタシはそんなに長くありません」
「わたしに継げということか、カエール?」
「はい。本家を継ぐのに相応しい人ほどいません」
「社交界であまり知られていないわたしは跡継ぎに相応しいと思えないが・・・」
「それはワタシに任せてください。兄上と本家を立たせるのはワタシの使命ですから。教会から出るための書類などは?」
「もうその件を済ませてきた」とフランスア様はポケットから紙の数枚をとり、カエール侯爵に渡した。
カエール侯爵は紙を読みながら、言う
「後、結婚だけですね」
「もう結婚?」
「ワタシの後で結婚したくないでしょう」
フランスア様は少し驚いた顔で
「お前が結婚するか」
「今相手をおとしているところです」
「こっちの家に跡継ぎを残すためだろう」
「はい」とカエール侯爵は微笑む
「カエール、後何年?」
「医者によると、6年です」
「わたし、本家と新王室を立たせるために、そしてお前の立場に立つ者に全て教えるまで少なさ過ぎる。後12年位生き延びろよ」
「ワタシの跡継ぎの教育の問題はもう手を打っています。後残りの分だけですね」とカエール侯爵は苦笑い
「わたしは誰と結婚すればいい?」と話題変えるフランスア様だった。
「アンジェリは悪い選択ではないと思います」
「愛人との結婚・・・ろくなことじゃないぞ」
「ではヴェンドメ家の味方になってくれる貴族を探してみます」
「美人じゃないと結婚しないからな」と冗談を言うフランスア様だった。
「兄上の好みの女性を探してみます」とカエール侯爵は微笑む。
「疲れている顔しているぞ、カエール」
「この二日間忙しかったです」
「休んだ方がいい。明日の葬式にそんな顔で出るな」
「はい、フランスア兄と話し終わったら」
「この話を終わったら、飲もう」
「しかしアンジェリを呼びました・・・」
「じゃ、わたしはアンジェリと終わったら・・・」
「執事に美味しいワインを準備させておきます」
「気になっているけど、カエール、お前の後ろに立っている女性って誰?お前の婚約者?」
「いいえ、婚約者ではないんですが」とカエール侯爵は言い終わる前に、フランスア様は言う
「紹介して」と。そして立とうとする
「だめ」とカエール侯爵は兄を止める「アリアネはワタシのものだ」
「侯爵のものになった覚えがありませんが」と私は言ったら、カエール侯爵に睨まれた「フランスア様、アリアネと申します。カエール侯爵の護衛兵を務めています」と微笑んだ
「護衛兵にまで嫉妬深いですね、カエール」とフランスア様はまた立とうとしている
「アリアネ」と侯爵は私を睨みつつ「フランスア兄はワタシより遊び好きですよ」
「フランスア様、今は侯爵以外の者に目を向けるつもりはありません」と近づいてきた本人に言ったら
「やっぱり、カエールの女か。残念・・・でもいいアイディアだと思うよ、カエール。女だと護衛兵だと思われないし、弱いと思い込んで、油断する人もいるだろう」とまったく真面目な話をしているように見えないフランスア様だった。
「兄上なら分かると思いました」とカエール侯爵は意味ありげの微笑みを見せた
「どこで見つけた?」
「アリアネはファオラン隊長の娘で、ワタシの部下です」
「軍人?珍しいね。ファオラン隊長の娘なら、腕は確かだろう」
「父上を知っていますか」と私は聞く
「ファオラン隊長とカエールをあわせたのはわたしだよ。君の母親の葬式で始めて会って、何年後カエールに会わせた」
「そうですか」
「兄上、ワタシは少し休みます」と立ちながら、侯爵は言う
「アンジェリと終わったら、お前を呼びに行くから」
「待っています。いつもの部屋を準備させましたから、使ってください」
「ああ」
「今日はお泊りやめてくださいね」
「分かっている。これ以上わたしのイメージをアリアネの前で壊すなよ」
「アリアネの前で守らなければならないイメージはありませんから、心配ないのです」
「手を出すなと釘を押しているんだね、カエール」
「その通りです。フランスア兄はどんな男なのか、ワタシは一番よく知っていますから」
「お前はわたしの教え子だからなぁ。師匠を知り尽くしている」
つづく
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