カエール侯爵と同じ位の身長の男がテーブルの前に止まった時に、三人共一斉に立った。
私はよく分からず、同じようにした。
「座りたまえ」と座りながら、その男が言ったー「おや?カエールの隣の娘は噂の護衛兵かい?」
「はい」とカエール侯爵は答える
「信用できる者だろうね」
「はい」
「じゃ、本番に入ろう。再来月兄の戴冠式だ。その日に我々は動く。オレは軍と共に式場に入るんだ」
「しかし・・・」とカエール侯爵
「カエールは軍を使うことに反対していると分かっているが、軍の上に立つことのできない国王なんて、すぐ潰される。貴族の機嫌とりは大事だが、軍を味方にしなければ、上に長く居続けられない。今の軍はカエールの手にある、そしてカエールはオレの手に。そうだろう?」
「確かに」とカエール侯爵は微笑んだ
「ジェアン、戴冠式まで周りの国と停戦と平和の話を進めてくれ」-そして第二王子フランシスが上着の中のポケットから封筒を二つ出したー「これはオレの方針、その中で自由に動きたまえ」とジェアン伯爵に一つの封筒渡したー「これはカエールの写し」とカエール侯爵にも一つのを渡した。
「明日からもう動き始めます」とジェアン伯爵は言う
「頼む。それとカエール、レオナと会わせてくれ」
「分かりました。いつにしましょうか」
「来週に。場所は任せる」
今気づいたが、誰一人も出されたワインに手を出さなかった。
「ワタシの別荘でどうでしょう。都から一日離れていますが」
「遠い、もっと近場のところがいい」
「教会でどうでしょう」とジェアン伯爵は言った
「それがいい。フランスア、内密に話せるような部屋を」
「分かりました。あまり知られていない教会を探してみます」
「ジェアンが動く間に、カエールが戦いをやめさせる。フランスアはその間貴族の機嫌とりでもしておくれ。オレが上に立ったときに、フランスアに公爵の爵位を与えよう」
「ありがとうございます」
「フランスアに期待している。どれほどオレのために貴族を動かせるかね」
フランスア様は微笑みで答えた
「死んだ人のための戦争、国民に目を向かない政治は長く続きすぎた。この国が死んでいると言うのに、なぜ父がそれを気づかないんだろうな」と第二王子は呟いた
「でもそんなに早く動いて、大丈夫でしょうか」とフランスア様は聞く
「上に立ってからこの国を変えるために色々大変だろうから、今動かないと、時間のないカエールは変えたこの国を見ることが出来ないのではないか」
カエール侯爵は深々と一礼をした
「礼を言うことがない、お前の力を借りているのはオレだから、オレの方が礼を言うべきだろう。・・・時間と言えば、これ以上自分の時間を短くするのをやめておくれ」
「自分がやらないといけないことだと思いましたので・・・」
「医者を戦場に送ると、他人を助けるのに必死になるものだな」
カエール侯爵は苦笑い。
「犠牲を減らしたい気持ち分かるが、自分が死んだら、何の解決もできない。むしろお前が死んだら、犠牲が増えるだけだ」
カエール侯爵は説教されている子供のようにただ黙ったまま聞いている
「これから無理せず、動きたまえ。その娘をお前のものにすれば、色々任せればいいのではないか」
「そういう関係になるのは・・・」とカエール侯爵。
「じゃ、オレのものにするか」とカエール侯爵を試しているようにフランシス王子が言う。
ジェアン伯爵とフランスア様はカエール侯爵を見る
カエール侯爵はただフランシス王子を見つめている
「私はこの場で発言してもいいかわかりませんが。 私は自由の身に生まれた以上、誰かのものになったりはしません。カエール侯爵の味方をしているのも、この話に手を借りているのも、私自身はこの国を変えるべきだと思っているからです。戦場で感情に流されて、戦えば、犠牲が増えると同じように、感情のまま行った政治が今の状況に至るのでしょう。戦も政も心でなく、頭でするものです」
フランシス王子は笑った
「二人の意志を尊重しよう。オレは口出しもしたりはしないから。でもこんな信念深い娘にもっと頼っていいじゃないか、カエール」
「頼りすぎるほど、既に頼っていますよ」
「その娘に仕事を頼むとしよう。戴冠式の日に、兄を式場に来ないようにしておくれ。殺し以外の手は何でもいい」
「わからました」
「僕は色仕掛けが一番手取りはやいと思いますね」とジェアン伯爵。
「得意ではないので、軍人らしい方法でやります」と答える私。
「色仕掛けなら、ワタシに任せた方がいいですね」と冗談を言うカエール侯爵
全員笑う
「これからの動きの細かい話はまた今度しよう。男4人・・・5人はこんな場でずっと難しい顔していたら、周りに変に見られるだろうし。少し遊ぼう」
「ワタシはこれで失礼します」とカエール侯爵は立つ
「アリアネに気遣っているのか」とジェアン伯爵は聞く
「体調まだ悪いから、この煙の中では苦しい」
フランスア様とフランシス王子はただ微笑んだ。
つづく