何書いていいか分からなかったから、くだらない話をしよう。


みんなは恋をすると人生の全てがカラフルに見えるっていう言葉、聞いたことある?


僕はこの言葉を単なる比喩表現としてじゃなくて、現実に体験したことがある。


それまでモノクロだった自分の世界が、周りの景色が、文字通りに鮮明で鮮やかに映るようになった。世界ってこんなに美しかったのか!?これは昨日まで僕がみていた空と本当に一緒のブルーか?ってくらいにね。


そう、僕の人生で最も幸せだった日々は、僕が21歳の時。

同じ職場の1個下の女の子が、彼女の仕事終わりの夜21時過ぎ頃、僕が借りていた部屋へよく通ってきてくれていたことだった。


その女の子は渋谷に行くと芸能事務所にスカウトされたというくらい綺麗な子で、いつも元気で愛想よくて、こんなモテない僕にどうしてわざわざ付き合ってくれるんだろうかって思うくらいに魅力的だった。


仕事終わりの静かな夜に、僕が部屋の電子ピアノを弾いているのを隣で座って聴きながら、愚痴とか人間関係の話、好きなアニメとか将来の夢、そんな他愛もない事を2人で語り合いながら夜を明かし...はせずに夜中の2時くらいにはいつも彼女は家に帰って行ったんだけどね(笑)


でも、彼女がいる日々は当時の僕にとって生きる全てだったんだ。厳密には交際はしていなかったけれど、あまりにも世間知らずで純粋すぎた僕は、彼女ももしかして僕を好きでいてくれるんじゃないか、だからこうして何度も僕の部屋にピアノを聴きに来てくれてるんじゃないかって、そう思ってた。


そんな生活が3ヶ月くらい続いた頃かな、こんなチャンスはきっと人生で2度とあるまい。勇気を出して告白しようと決断した、そんなある日のこと。


彼女がいつものように仕事終わりに僕の部屋に来てくれたんだけど、どこか様子がおかしい。部屋のドアを開けると、そこには泣き腫らした真っ赤な目。視線も合わさず、言葉も無く、床に座り込んでしまった。


「一体どうしたの?何があったの?」

いくら尋ねても、彼女は黙って俯きながらじっと下を向くばかり。


しばらくして絞り出した一言が、

「彼氏に振られたの...」だった。


彼女はそのまままた泣き出した。


「...えっ..?」


この瞬間ほど、僕の人生で幸福度のメーターが乱高下した事はないだろう。

彼女は自分には彼氏が居ないと言っていたけれど、この3ヶ月の間にちゃっかり相手ができていたらしい。


つまり僕は彼女にとっては、遠距離で会えない彼氏の代わりに隙間を埋めるための都合のよい男でしか無かったのだ。


交際していた事実を初めてそこで明かされて、状況をまるで受け入れることができなかった僕は、完全に茫然自失の状態だった。


正直その後彼女の話はほとんど全く何も頭に入ってこなかった。

ピアノで彼氏に向けての儀式だとか言ってショパンの「別れの曲」を泣きながら弾く彼女。

それを聴きながら泣く僕。そのままやけくそで告白して玉砕。地獄の1日だった。

職場が琵琶湖のほとりにあったんだけど、勘違いして勝手に舞い上がっていた自分を文字通り湖の底に沈めてほしいと思った。



失恋が偉人をつくる(2)へ続く!