「ズン、ズン」という低音が会場に入るため外で待っていた僕らの体に響いていました。
当時新宿リキッドルームはビルの7階にあって、そこに行くためには階段をのぼっていかなければなりませんでした。
会場が7階のため入り口付近にスペースはなく、オープンを待つ観客は階段に長い列を成していました。
壁が薄いせいか中でリハーサルをしているWINOの演奏が薄っすらと聴こえ「今日はあの曲やこの曲もやるんだな」ということが事前に分かりました。笑
僕らの他にもこの情報を聞きつけたWINOファンが沢山いて、オープンを待つ間階段で交わされるそれぞれの会話の話題はWINOに関するものばかり。
そんな「みんなWINO大好き」な連帯感が僕はなんだかとても嬉しかったのを覚えています。(ところでWINOのファンは女の子が多かった。男臭いバンドだったけどメンバーが結構イケメンだったからかな??)
ようやくオープンし心配していた当日券もゲットできた僕らはライブ会場へ。
当然すぐにライブは始まらず会場はクラブらしく音楽が大音量で流れていました。
僕らはビールを飲んでタバコを吸いながらが今日のライブで聴きたい曲の話や、DJの選曲に「あ、この曲は〇〇だね」と反応したりしながらその時を待ちました。
オープンからしばらく時間が経ち場内の雰囲気も「出来上がって」きた頃、会場の照明が少し変わりはじめました。
それは「これからライブが始まる」という合図であり、会場からは「おぉ〜ッ‼️」という「待ちきれない」と言わんばかりの歓声が。
ステージ前のフロアにはオーディエンスが集中し会場の熱気が上がっているのが分かります。
僕らはステージから少し離れた上の段差の部分で右側からもっとも見やすい位置に構えました。
そしてついに。
サッカー会場のような大歓声のもとステージ上にWINOの5人が登場しました‼️
テレビや雑誌でしか見たことの無かった憧れのバンドがすぐそこにいるということに、僕の興奮は最高潮でした。
そしてそれはY君も会場のみんなも同じだったようでした。
いたる所で声援が飛び買います。
そんな会場の様子を見て、ボーカルの吉村潤は何度も頷いています。
無言ながら「今日はありがとう。みんなの思いは分かってるぜ。」と言っているように僕には見えました。
そして1曲目。
僕の記憶では確か「WARSAW」だったと思います。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのようなザクザクしたチョッコーのギターリフが始まると同時に、フロアは強烈に波打ち始めます。
それはWINOとファンが一体となってライブを作っているよう。
後になって再結成したストーン・ローゼズのライブを見たことがありますが、フロアのノリはその時とまったく同じ様子でした。
1曲目が終わると割れんばかりの大歓声。
続け様に2曲目へと突入していきます。
すべての曲は覚えていないけど、「THE ACTION」「Tomorrow」「Anyhow」「Inhaler」「WILDFLOWER」「太陽は夜も輝く」「Devil’s own」「WHITE ROOM」「LOVE IS HERE」「Go! Straight Song」等、人気の曲をほとんど演奏してくれました。
ラストステージにふさわしい最強のセットリスト。
WINOはちっとも演奏が下手ではありませんでした。
リズム隊は彼ら特有の横揺れのリズムを作り出しバンドのボトムを支え、その上を2つのギターが縦横無尽に駆け回り、そして普遍的で胸に染み渡る強力なメロディーを力強く歌い上げるボーカルがそこにはいました。
こんな素晴らしいバンドの楽曲をもう聞くことができないのか
こんな素晴らしいバンドをもう見ることができないのか
そう思うとちょっぴり泣きそうになりました。
ライブの最後は「ain’t gonna lose」で締めくくられました。
WINOの強烈なグルーヴが去った後は鳴り止まないアンコールの嵐。
するとステージに1人の男性が出てきました。
結構酔っ払っているようで、マイクを掴むと「この際WINOに全曲やってもらおうぜーッ‼️」と会場に向けて叫びました。
会場からはそれに応えるような「ウォーッ‼️」という大歓声が。
多分あの男性はタナソーだったんでしょうね。
しばらくするとWINOのメンバーが再びステージに。
そして会場からのアンコールで演奏された曲は、僕が初めてWINOを知った彼らの代表曲でした。
「LOADED」。
CD通り、ドラム黒沼のハイハットのカウントが始まり「君のピストルは」からのメロディーが歌い放たれます。
会場には感極まって泣いている人もいるようでした。
アウトロの演奏が終わりメンバーが袖にはけた後も、アンコールは鳴り止まなかったのを覚えています。
オールナイトのイベント帰りの電車の中で、一つの時代の終わりを感じて少し切なくなりました。
それと同時にこんな素晴らしいバンドに出会えてその楽曲とともに日々を過ごせたことが、とても誇らしく思えました。
ライブで演奏された「ain’t gonna lose」が収録されているセカンドアルバム。
「おわりに」に続く
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