WINOのファーストアルバム「Useless Music」とセカンドアルバム「WINO」を聴くと実家がある秋田の冬を思い出します。
当時高校3年生、受験シーズン真っ只中の冬、僕は勉強をいっさいせずに音楽を聴いてギターを弾いて過ごしていました。
学校から帰った後部屋に篭って音楽を聴いてギターを弾いての繰り返し。
それを夜中の2時頃までひたすら続けるのです。
地元秋田は今でこそ量が少なくなったけど昔は結構な量の雪が降りました。
その雪を寄せるために深夜に除雪車が来ます。
毎晩誰もいない家の前の雪道を通る「ゴー」という静かな除雪車の音だけが響きます。
その除雪車が過ぎた後は静けさだけがふいにポンと置いていかれたようで、しんしんと降る雪の積もる音さえも聞こえてきそうなくらいの静寂。
積もった雪に街灯の灯りが反射して真夜中にも関わらず空はうっすらと明るい。
そんな景色を窓から見ながらWINOのアルバムを聴いていたのを思い出します。
ちょっと詩人でしたね。
CDを貸してくれる時にS君が
「これ聴いてみなよ。ただしギターは望の方が上手いよ。」
と言っていてちょっと笑っちゃいました。
S君は当時の僕の数少ない音楽仲間でドラマーにも関わらずギターの鍛錬を怠らない奴でした。笑
彼の実家はスペース・シャワー・TVに入っていたので当時最新の音楽をいつもチェックしていて、僕よりもほんの少し先の音楽をいつも紹介してくれました。
スーパーカーやWINOの音楽を2人で聴いて「あの曲が好き」とか「この曲のボーカルが良い」とかよく話してました。
さて話は少し戻って。
S君から借りたCDをコンポで再生して一聴、僕はS君の言っている意味が分かりました。
ファーストアルバム「Useless Music」は一曲目「Devil’s Own」という超カッコいい必殺ギターリフの曲から始まるのですが。
このギターリフが「ちょっとつたない」。(ような印象を受けた)
これは本当にリードギタリストの久永に失礼を承知で書かせてください。
僕はWINOの楽曲は大好きで、楽曲内で聴ける久永と外川のギターも死ぬほど大好きです。
そんな僕のいきすぎた愛情からくるものだと思って、どうかご容赦いただきたいです💦
WINOの楽曲のギターはどこかしら素人臭くて、すごく悪く言えば「僕よりほんの少し上手いくらい」のテクニックしか無いように当時の僕には聞こえました。(本当にごめんなさい)
例えばB’zの松本とかCharとかそういった凄腕のギタリストのそれとは明らかに質感の違うギターだったのです。
それはそれまでの「僕が逆立ちしても届かない凄腕ギタリスト達」とは一線を画したものでした。
「これなら俺でもいける!」
みたいに思わせてくれる等身大で身近な新世代のギターサウンドでした。
ギターの音もあからさまに歪んでいて野暮ったくて洗練されていない。(実際に久永はProco というメーカーのディストーションを使用している)
それまでのいわゆる「ギターヒーロー」とは明らかに違うタイプのギター。
それが当時の僕にはものすごく新鮮でかっこよく聴こえたのです。(もちろん今聴いても最高にかっこいいと思います)
そしてその頃BSでやっていた「真夜中の王国」という番組内でWINOのライブを観る機会があったのですが。
これがまた絶妙に「下手」だったのです。(本当にごめんなさい、大好きだからこそ書かせてください)
吉村の不安定なボーカル、つたないギター。
それこそ「学祭バンドの延長線」のようなライブ。(本当にごめんなさい)
‥なんだけど、これがまたクソカッコよかったんですね。(当時デビューした「98年の世代」と言われるバンド達は大抵が演奏が下手だった。しかしかっこよかった。)
バンドって本当に不思議です。
一人一人ではたいしたことのない演奏の人たちも数人集まってバンドとなって音を出すと、単純な足し算を超えるものになります。
そしてWINOにもそれがありました。
演奏は下手なのにフレッシュで話題のバンドが持ち得る「無敵感」「不敵感」みたいなものが楽曲・ライブを通して漂っていました。(僕はこの「無敵感」「不敵感」が大好物です)
何よりも演奏のつたなさを補ってあまりある楽曲の強力さが当時のWINOにはありました。
それはボーカル吉村のメロディーメイカーとしての抜群のセンスによるものだったと思います。
オアシス直系のドメジャーなコード感。
メジャーセブンスや分数コードに逃げない直球勝負のドメジャーコードによる男気溢れる哀愁漂うメロディーライン。
欲しいところにドンピシャで欲しいメロディーを投げ込んでくる直球勝負の感覚。
それでいて有名どころの売れ線には無いちょっとフックの効いた感じ。
そんなドメジャーで普遍的で強力なメロディの楽曲がWINOの魅力でした。
多くのファンがそうであったように僕もこの魅力にグイグイと引き込まれていったのです。
「Useless Music」「WINO」はいずれもインディー臭漂う素晴らしい内容のアルバムでした。
特にファースト「Useless Music」に収録されている楽曲はそれまでの邦楽ロックには無い肌触りのものばかりで18歳の僕にはとても刺激的でした。
「Devil's Own」「White Room」のようなギターリフ全開の「かっこいいメロディーライン」の曲
「Inhaler」「SISTER'S HIGH」「Call the Sun」のような当時流行していた打ち込み・ブレイクビーツチックな曲
「WILD FLOWER」「SHE」「LOADED」にような「THE UKロック」のような曲
そのどれもがそれまでの日本バンドが持ちえなかった洋楽っぽい質感のもので、「新しい世代の音楽」のように僕には感じたのです。
「Useless Music」に収録されている全然有名じゃない「Confusion」という実験的な曲があるのですが、僕はこの曲が当時からかなり好きです。
この曲はたった2つのコードの繰り返しの中でリズムの反復を楽しむような曲なのですが、こういうタイプの曲をやるバンドは当時全然いなくて僕にはそれがめちゃくちゃかっこよく思えたんですね。
そんなわけであっという間にWINOのファンになった僕はS君に「WINOすげー良かったよ!」と伝えました。
そしてギターでもWINOの曲をコピーしまくりました。
WINOのギターはそこまで複雑なフレーズはありませんが結構エフェクティブな部分があり、かなり勉強になりました。
新しいギターの引き出しが増えるきっかけになりました。
ま、それ以前に弾いていてめちゃくちゃ楽しいギターだったんですよね。
ギターロックバンドのギターに相応しい、ロックでポップでカラフルなギター。
10代のギター少年を夢中にさせる要素がふんだんに盛り込まれたギターだったんです。
そんな風に受験シーズン真っただ中にCDを聴いてギターを弾きまくった結果、僕はめでたく大学に落ち浪人となったのでした😭
浪人になるきっかけとなったWINOのアルバムを紹介しておこう。
当時のUKロック(特にオアシス・シャーラタンズといったマンチェスター勢)の影響を受けた直球で力強いロックが聴けるファースト。シンプルなギター・ロックだが随所でインディー感溢れる実験的な部分があり、それゆえに作品全体にサイケデリックな香りが漂っている。
前作よりも「UKロック色」は影を潜めたもののポップでメロディアスな楽曲は健在。これぞ「WINO節」といった世界観を確立したセカンド。随所で聴けるギターは様々な先人達のギターを消化したギターロックのお手本のようなサウンド。
③に続く
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