ギターを長年弾いてきたんだけど、やはりその都度その都度コピーしてきた曲・聴いていた曲は変化している。
そこで!
ギター人生を通しての「俺のギター名盤」を紹介していきたい。
僕はもともとギターを始めてから音楽を本格的に聴き始めたタイプなので、リスナー型というよりプレイヤー型の音楽の聴き方をしている。
音楽を聴く際、「曲が良い」というのはもちろんありきなんだけど、その次にくるのはやはり「ギターがカッコイイか」ということ。
そういった音楽の聴き方をしてきたからこそ、今の僕のギタースタイルが築かれたのではないか?と思ったりもする。
そういった僕の人生の中の「ギター名盤」を紹介していきたい。
さて、前置きが長くなったけど早速始めよう。
今日の「俺のギター名盤」
My Little Lover
「NEW ADVENTURE」
My Little Loverはボーカルのakkoをメインに素晴らしいポップスを聴かせてくれる音楽プロジェクトだ。現在はakkoのソロプロジェクトだが初期はギタリストの藤井謙二との音楽ユニット、プロデューサーの小林武史を加えた3人組だった時期もある。「白いカイト」、「Hello Again」、「Destiny」等数々のヒットソングを送り出している。ボーカルのakkoの透明感ある歌声が楽曲とマッチした時の破壊力は凄まじい。
多分、え?と思った人がほとんどだろう。笑
ギター名盤なのにMy Little Lover。(以降マイラバ)
マイラバはロックと言うよりは完全にポップスであり、その楽曲を通してもギターのマスターボリュームは限りなく小さく脇役的な存在だ。
ギターを楽しむ楽曲というよりも完全に歌を楽しむ楽曲。
それがマイラバだ。
だけど!
僕からしてみればついにこれを書く時が来た!という感じ。
マイラバの魅力はなんと言ってもakko のボーカルでありそれについてはおそらく今までに沢山言われてきただろうから僕は敢えてそこは書かない。
あくまでギタリストという視点から語っていきたい。
マイラバのギタリストは藤井謙二。
写真右(当たり前か)笑。写真お借りしました。
今はフジイ・ケンジというのが一般的かな?
彼は現在なんと元ミッシェル・ガン・エレファントのチバ・ユウスケ率いるバースデーのギタリストとして活躍中だ。
マイラバを聴いていた高校生の頃の僕にはまさかこんな日がくるとは思いもしなかったよ!
それだけミッシェルとマイラバは対極にいたと思うから。
彼は今はバースデーでそれはそれは男気溢れるギターを弾いている。
それはそれでもちろんめちゃくちゃカッコいい。
だけど、僕は敢えてマイラバ時代の藤井君のギターについて書きたい。(敬意を込めて藤井君と呼ばせてもらおう)
僕はマイラバの初期の頃から藤井君のギターが大好きだ。
まだギターを始めたばかりの高校生当時の僕にとって憧れの対象は自分が大好きなポップスのギタリスト、例えばミスチルの田原君(この人のこともいずれ書かなきゃね!)やマイラバの藤井君だった。
ミスチルもマイラバもギターの音がめちゃくちゃ小さかったから必死に音を拾ってコピーしてた覚えがある。
で藤井君のギター。
藤井君のギターは当時の僕にとってものすごく違和感だった。
何がって、もの凄いポップスのマイラバの楽曲のギターなのに全然ポップスじゃなかったから。
フレーズや音がポップスのそれとはまったく違ったんだよね。
例えばフレージングとかディストーションが深くかかったギターの音とか、ポップスの楽曲からは完全に浮いてしまったアンバランスなものに僕には聴こえた。
何がどうって言われると上手く表現できないんだけど感覚的に「あれ?何か変だな」みたいな感じだった。
違和感を感じているはずで何か変な感触なのに、なぜか僕は藤井君のギターにとにかく耳がいってしまって、マイラバを聴く人の聴き方とは違った聴き方でマイラバを聴くようになっていってしまった。笑
今考えるとこれこそがロックの肌触りというか感触であり、藤井君のギターにはそれがあったということなんだけど。
マイラバの名盤であるファーストアルバム「evergreen」から藤井君のギターはマイラバにアンバランスさの味付けをしていた。
失礼を承知で言うなら、それはプロのスタジオミュージシャンだったら絶対にしないだろうギターのアプローチだと思う。
プロと言うにはあまりにもインディーズ臭く、洗練されていないギターが当時の藤井君のギターの印象だった。
当然来るだろう箇所でお決まりのフレーズを登場させないひねくれたギターと言うか、とにかく王道をなかなか弾こうとしないと言うか。
そうかと思えば「Hello Again」での曲を決定づけるあの印象的な冒頭のギターフレーズを弾いてみたり。
そんなちょっとひねた藤井君のギターは続くセカンドアルバム「PRESENTS」でも健在で、とても素敵で楽しいギターを聴かせてくれる。
で、このアルバム。
サードアルバムのこの「NEW ADVENTURE」はマイラバにおける藤井君のギターの完成形を聴くことができる。
それまでの2枚のアルバムでのアンバランスさは陰を潜め、楽曲にピッタリとマッチするフレーズと音色で藤井君のギターが鳴っている。
このアルバムを聴くまで僕の中で勝手に「藤井君はマイラバにおけるギターのアプローチに迷っているんじゃないか?」と思っていたんだけど、このアルバムのギターからはそんな様子は微塵も感じられない。
まるで今までのアルバムはマイラバのギターの練習であったかのように、このアルバムでは確信に満ちたギターが弾かれている。
明らかに前2作とは一線を画したギターを聴くことができる。
それはおそらく前2作はアナログな雰囲気を持っていたのに対して、このアルバムは当時のデジタル技術を詰め込んだものであることも起因しているだろう。
生ドラムから打ち込みのドラムへの変化や、デジタル機器の音像を持った楽曲達に対しての「生」のギターのアプローチ。
前2作で学習してきたマイラバの楽曲に対するギター方法論をマスターできたからこそのギターとでも言うべきか。
ではようやくギターを見ていこう。笑
まずギターの音色。
このアルバムでの藤井君のギターサウンドはそれまでとは違いかなりクランチ気味の歪みとなっている。
「STARDUST」や「CRAZY LOVE」、「Fallin’ Blue」といった楽曲では適度に歪んだクランチ気味の心地よいギターの音を楽しめる。
「CRAZY LOVE」は違うだろうけど、おそらく他2曲はギターアンプ出音からの録音ではなくアンプシュミレーターを使用したギターのLINE録りといった印象が強い。
それだけクリアかつコンプレッサー気味の音だ。
そうかと思えば「ALICE」や「12月の天使達」、「ANIMAL LIFE」では従来のロックな歪んだギターを聴かせてくれる。
クランチ気味のギターはおそらくジャズマスターやカジノといったシングルコイルもしくはP-90を搭載したギターのサウンド。
それに対して歪んだギターはギブソンのレスポールカスタムでのサウンドだろう。
次にギターのフレーズ。
僕はソロっぽいフレーズを弾いている藤井君のギターも好きだけど、カッティングのギターが特に好きだ。
藤井君のカッティングギターはクリーンな音で「チャキーン」と歯切れ良く鳴っている。
「CRAZY LOVE」のサビにいたるまでのバッキングギターは僕にとって最高に聴いていて楽しいギターだ。
この曲はサビにいくまでルート音を除いたコード音でひたすら軽いカッティングを繰り返し、そしてサビで「ジャガジャーン!」と一気にコードをかき鳴らす。
それはおそらくギタリストにとって快感以外の何ものでもないだろう!
それから「12月の天使達」のギターソロは感動もの。
初めてこの曲のギターソロを聴いた時の感想は「お?どうした藤井君?」だった。笑
痒いところに手が届くというか、来るべき箇所でみんなが待っていたフレーズをドンピシャでハメている。
それなのに無駄にポップではなく、あくまでロックの感触を残しているあたりはさすがと言うしかない。
また「Private Eyes」のようなブレイクビーツを用いたデジタルサウンドの楽曲にも藤井君はきちんと対応している。
派手なギターを弾くわけでないのにしっかりと楽曲を印象づけるギターフレーズを弾いている。
アルバム全体を通して藤井君は実に的確なアプローチのギターを楽曲に加えていて、マイラバの持つポップさと藤井君のロックなギターがとても幸せな形で融合している。
ここで特筆すべきは音色にしてもフレーズにしても楽曲にピッタリとハマっていて浮いていないということだ。
前2作での藤井君のギターは良くも悪くもマイラバのポップな楽曲からは浮いていた印象が強い。
それが藤井君のロックなギターの持ち味で僕にとってはカッコ良かったんだけど。
対して「NEW ADVENTURE」での藤井君のギターは実に的確なアプローチで楽曲に貢献している。
このアルバムが発表される以前に発表された曲でこのアルバムにも収録されている「Destiny」の頃から藤井君のギターの変化が現れていたと僕は記憶している。
それまでの強烈な歪みは抑えられブリティッシュな粒だちの歪みというか、エフェクターを使用しないアンプを通しただけのギター本来のナチュラルな歪みのギターをこの曲で聴くことができる。
フレージングもまるで当時のUKロックのギタリストが弾きそうな感じで、高校生だった僕はこの曲のギターをコピーしまくったものだ。
さて。
僕は藤井君のギターは音もフレーズも大好きなんだけど、ギタリストとしての藤井君ももちろん大好きだ。
彼にはいわゆる職人肌のギタリスト特有の寡黙さがあり、余計なことは話さずギターを通してすべてを語るような部分がある。
いちギタリストとしてそういう職人気質のギタリストにはやはり憧れがある。
そして僕の尊敬するギタリストはやはりこういうタイプが多い。
アベフトシ、ジョン・スクワイアなどなど。
僕自身もこういった職人気質のギタリストの系譜になんとか名を連ねたいなと思ったりする。
話はちょっと飛んだけど。
ところで余談だけどこの「NEW ADVENTURE」は初期の頃の楽曲が収められている。
「ALICE」はファーストアルバムの頃の楽曲でそれまでアルバムへの収録が見送られ、今回のアルバムに収録されることになったそうだ。
そのため「ALICE」では藤井君の初期のギターを聴くことができるのでそれも楽しい。
僕の個人的な話になるけど僕はギタリストだけどソロのギタリストからほとんど影響を受けてこなかった。
ソロのギタリストから影響を受け始めたのは本当にここ1~2年でそれまではバンドのギタリストをカッコいいなと感じていた。(今もだけど)
僕がバンドのギタリストをカッコイイと感じるキッカケは藤井君やミスチルの田原君のギターを聴いていたからだ。
もともとポップスを聴いていた僕にとってはギターソロをバリバリ弾くようなソロのギタリストというのには馴染みがなく、それよりだったらバンドアンサンブルの中で鳴らされるギターの方がカッコイイと思ったのだ。
だからギターを始めたばかりの高校生だった僕にとってギターヒーローはB'zやMr.Bigのギタリストではなく、マイラバやミスチルのギタリストだった。
この感覚は今も変わらずあってポップスの中でバンドアンサンブルとしてキラリと光るものを弾くギタリストがやはり好きだったりする。
歪んだエレキギターというのはロックの象徴みたいなものでポップスとはある意味相入れないものだったりするんだけど、だからこそそのアンバランスさというか違和感が楽曲に付加する価値って実はすごいんじゃないかって思っている。
こんなポップな曲なのに、ギターはクソロックでカッコイイ!!
みたいな。
僕がマイラバの藤井君のギターに感じるのはまさにそれだ。
そういうギターにはいつもグッときてしまうのだ。
そんな訳でマイラバの藤井君のギターについて熱弁してしまいました。
多分このアルバムが発売された当時マイラバのギターに注目する人はほとんどいなかったんじゃないかな。
だからマイラバのギターをコピーする人なんて僕の周りにはまったくいなかった。
マイラバのギターをコピーするのなんてオレぐらいじゃない?と思ってたし。笑
すでに書いたように僕はギタリストだけどギターの出発点においていわゆるロックギタリストの影響を受けてギターを始めた訳じゃない。
最も初期の僕のギターヒーローは藤井君や田原君だった。(この2人は今でも大好きなギタリストだ)
だから自分のギターの1番根底の部分には藤井君や田原君のギターの遺伝子が間違いなくあると思う。
自分でギターを弾いていてふとした拍子に出てくるものとかアプローチが藤井君っぽかったりする時がある。
僕の楽曲に対するギターのアプローチや考え方にとても大きな影響を与えてくれたギタリストだ。
いつかマイラバの藤井君のギターの魅力を存分に語り合える人に巡り合いたいものだ。
なんだか藤井君に対する熱量がすごくてとりとめのない文章になってしまったけど。
まとめです。笑
この「NEW ADVENTURE」ではポップスにおけるロックギターの理想的なアプローチを聴くことができる。
是非是非聴いてみて欲しいです!
My Little Lover
「NEW ADVENTURE」
ギタリストなら聴くしかない!
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