アンネリーゼ・ローテンベルガー

Anneliese Rothenberger

1919~2010。ドイツ、マンハイムに生まれる。マンハイムの音楽学校に学ぶ。1943年、コブレンツでデビュー。1946年からハンブルク国立歌劇場、1956年からベルリン・ドイツオペラ、1958年からウィーン国立歌劇場と契約。1960年にメトロポリタン歌劇場にデビュー。

 

とりたててセンセーショナルな経歴というものはなく、地道に実績を積み上げて徐々に大衆的人気を獲得してきた感じである。基本的にリリックソプラノだが、ずば抜けた美声とかテクニックというものはない。しかし、発声が非常に安定していて、とくに高域のパワーは侮りがたいものがあり、それがゆえ何をやらせても様になる。容姿に秀でていることも相まって、ドイツでは大人気となり、テレビでレギュラー番組を持つほどだった。録音したオペラは数多いそうだが、日本での人気はそれほどでもないため、聴くことのできるCDは限られているようである。

 

ここで取り上げたいのは次の三つ。

 

 

(1)モーツァルト『後宮からの逃走』 クリップス指揮 ウィーンフィル EMI 1966
ローテンベルガー(コンスタンツェ)、ニコライ・ゲッダ(ベルモンテ)、ルチア・ポップ(ブロンデ)、ゴットロープ・フリック(オスミン)、ゲルハルト・ウンガー(ペドリロ)
これはポップのところでもゲッダのところでもフリックのところでも取り上げたCDなのだが、もう一度取り上げざるを得ない。ローテンベルガーの歌うコンスタンツェのアリアはじつに見事で、彼女の実力が並のものではない事がこれでわかる。

 

(2)J.シュトラウス『ウィーン気質』 ボスコフスキー指揮 フィルハーモニア・フンガリカ EMI 1976
アンネリーゼ・ローテンベルガー(ガブリエーレ)、ニコライ・ゲッダ(ツェドラウ伯爵)、クラウス・ヒルテ(ギンテルバッハ侯爵)、レナーテ・ホルム(フランツィスカ・カリアリ)
ローテンベルガーはオペレッタで活躍したらしいが、ここで聴けたオペレッタは『こうもり』の他にはこれだけであった。シュトラウスのワルツが満載の楽しいCDで、これはオススメである。なお、ローテンベルガーがロザリンデを歌っている『こうもり』(ボスコフスキー指揮)も悪くはないが、カルロス・クライバー指揮による決定盤がある以上、これはあまりオススメしない。

(3)モーツァルト『イドメネオ』 シュミット=イッセルシュテット指揮 シュターツカペレ・ドレスデン EMI 1971
アンネリーゼ・ローテンベルガー(イリア)、ニコライ・ゲッダ(イドメネオ)、アドルフ・ダラポッツァ(イダマンテ)、エッダ・モーザー(エレットラ)、ペーター・シュライアー(アルバーチェ)、エーバーハルト・ビュヒナー(大司祭)、テオ・アダム(神託の声)
これは歌手陣も充実しているし、ローテンベルガーの出演したCDとして悪くはないが、この当時はまだモーツァルトのオペラ・セリアに対する解釈が確立されていなかったようである。現在、アーノンクール等による完成されたオペラ・セリアの録音が多数あり、それらに比べるとやや色褪せるようである。

 

 

・・・あと、ローテンベルガーの歌う『ばらの騎士』のゾフィーは絶品だったそうだが、残念ながらそのCDは見つけることができなかった。

 

 

 

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