グィネス・ジョーンズ

Gwyneth Jones

1936~。英国ウェールズのポントニューイニッドに生まれる。ロンドン王立音楽院で学んだ後、シエナのアカデミア・ムジカーレ・キジアーナ、さらにチューリッヒの国際オペラ・スタジオにも学んだ。1967年、『ジプシー男爵』のツィブラでデビュー。その後、メゾからソプラノへ、さらにリリコ・スピントからドラマティコへと転身した。そしてイタリアオペラからワーグナー、リヒャルト・シュトラウスを歌うようになり、それが認められてウィーンやロンドンの歌劇場で大役を任せられるようになった。1968年、バイロイト音楽祭に『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のエヴァでデビュー。さらに72年には『タンホイザー』でエリザベートとヴェーヌスの二役を演じて好評を博した。76年、『ニーベルングの指環』百年記念上演でブリュンヒルデを歌った。

 

高音域に特徴的な鋭さがあり、それがやや粗くて耳に障ることもあるが、十分なパワーを持ち、しかも高音域が苦しくならないドラマチック・ソプラノというのは人材が乏しく、その存在自体が貴重である。したがって、かなり重宝されたようである。

 

 

(1)ワーグナー『パルジファル』 ブーレーズ指揮 バイロイト祝祭 グラモフォン1966

グィネス・ジョーンズ(クンドリー)、ジェームズ・キング(パルジファル)、フランツ・クラス(グルネマンツ)、トマス・スチュワート(アンフォルタス)、カール・リッダーブッシュ(ティトゥレル)、ドナルド・マッキンタイヤ(クリングゾール)

私はこのオペラ自体がよくわからないのだが、このCDはオケも歌手もそろっていて録音も非常にいいので純然たる音楽として楽しめないではない。しかし純然たる音楽として聴くならカラヤン盤、ショルティ盤という強力なライバル盤が存在するので必ずしもこれがベストとは言い難い。ただグィネス・ジョーンズのクンドリーはパワフルで、これが一番存在感がある。

 

(2)ワーグナー『さまよえるオランダ人』 ベーム指揮 バイロイト祝祭 グラモフォン 1971
グィネス・ジョーンズ(ゼンタ)、トマス・スチュアート(オランダ人)、カール・リッダーブッシュ(ダーラント)、ハーマン・エッサー(エリック)
きつい高音域を出すグィネス・ジョーンズはややもするとヒステリックに感じることもあるが、ゼンタのようなキャラだとむしろそれが適しているようだ。

 

(3)『ローエングリン』 クーベリック指揮 バイエルン放送交響楽団 グラモフォン 1971
グィネス・ジョーンズ(オルトルート)、ジェームズ・キング(ローエングリン)、グンドゥラ・ヤノヴィッツ(エルザ)、トマス・スチュアート(フリードリヒ)、リッダーブッシュ(ハインリヒ)
オルトルートは本来ならメゾが歌う暗い役だが、グィネス・ジョーンズは声色を変えて上手く歌っていると思う。トマス・スチュアートの暗く鋭い声とよく合っている。

 

(4)ワーグナー『ワルキューレ』 ブーレーズ指揮 バイロイト祝祭 フィリップス1980 
グィネス・ジョーンズ(ブリュンヒルデ)、ペーター・ホフマン(ジークムント)、ジャニーヌ・アルトマイア(ジークリンデ)、マッティ・サルミネン(フンディング)、ドナルド・マッキンタイア(ヴォータン)、ハンナ・シュヴァルツ(フリッカ)
歌手陣は揃っているが、個人的には最も期待外れなのがグィネス・ジョーンズのブリュンヒルデであった。力が入ったときにどうも高音域がヒステリックに響く。全体として神聖さのある静寂の中を透明感のある美声が突き抜ける感じがカラヤン盤と似ているが、他のメンバーはともかく、グィネス・ジョーンズのブリュンヒルデだけが全体の雰囲気に似つかわしくない。

 

(5)ベートーベン『フィデリオ』 ベーム指揮 シュターツカペレ・ドレスデン グラモフォン1969

グィネス・ジョーンズ(レオノーレ)、ジェームズ・キング(フロレスタン)、エディット・マティス(マルツェリーネ)、テオ・アダム(フェルナンド)、マルッティ・タルヴェラ(ピツァロ)、ペーター・シュライヤー(ヤキーノ)、フランツ・クラス(ロッコ)

このオペラに関しては、他に聴いたのはバーンスタイン盤のみである。これにひどく感心したのでどうしてもこれと比べてしまうが、どちらも録音が良く綺麗に仕上がった演奏である。しかし純然たる音楽の美しさで言えば断然バーンスタイン盤、ドラマ性を重視すればベーム盤ということになるだろうか。

 

(6)リヒャルト・シュトラウス『サロメ』 ベーム指揮 ハンブルク国立歌劇場 グラモフォン1970

グィネス・ジョーンズ(サロメ)、フィッシャー=ディースカウ(ヨカナーン)、リチャード・キャシリー(ヘロデ)、ミニヨン・ダン(ヘロディアス)

このオペラは何度もいうようにカラヤン盤が絶対である。それ以外はどれもヘンに聴こえる。とくにこの盤ではフィッシャー=ディースカウがなんでヨカナーンなのか、さっぱりわからん。これじゃサロメがぞっこんになるわけないだろう。ベームはこういうことはまるでわかっとらんのである。

 

 

 

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