ジェシー・ノーマン

Jessye Norman

1945~2019。ワシントンのハワード大学を卒業した後、ボルティモアのビーボディ音楽院で声楽を学ぶ。1969年、ミュンヘンの国際音楽コンクールに優勝。ベルリン・ドイツオペラと3年間の契約を結んだ。その後、コヴェント・ガーデン、ミュンヘン、メトロポリタンと進出。

 

リリックな美しい声を持ちながら、同時に太さと鉄壁の安定感を感じさせる。プリマとしての資質は十分だが、ただそれだけでは物足りないのがオペラである。非常に多くのレパートリーをこなせる実力があるが、なんだかいまひとつ観客を熱狂させるような強烈にアピールするものがないような気がする。

 

以下、必ずしもオススメの順番ではない。

 

 

(1)ビゼー『カルメン』 小澤征爾指揮 フランス国立管弦楽団 フィリップス1986  

ジェシー・ノーマン(カルメン)、ニール・シコフ(ドン・ホセ)、ミレッラ・フレーニ(ミカエラ)、サイモン・エステス(エスカミーリョ)

小澤征爾の指揮は骨格がしっかりとしたうえで細部を丁寧に表現している。いかにも小澤征爾らしい大変好ましい演奏である。歌手も美声を揃えているのでこれを音楽として聴く限りではほとんど不満がない。しかし、どうも人間臭いドラマを感じさせない。とくにこのオペラは激しく情熱的な要素が必要になると思うが、そういうものがイマイチなのである。

 

 

(2)ヴェルディ『海賊』 ガルデッリ指揮 ニューフィルハーモニア管弦楽団 フィリップス 1975
ジェシー・ノーマン(メドーラ)、カバリエ(グルナーラ)、ホセ・カレラース(コンラード)


(3)ヴェルディ『一日だけの王』 ガルデッリ指揮 ロイヤルフィルハーモニック管弦 フィリップス 1973
ジェシー・ノーマン(ジュリエッタ)、コッソット(ポッジョ伯爵夫人)、ホセ・カレーラス(ベルフィオーレ)

 

この2枚は若い頃のジェシー・ノーマンが、カバリエ、コッソットという当時の大スターと共演したもので、大変聴きごたえがある。ノーマンはその実力からしてこの二人に全然負けていない。2枚ともヴェルディのオペラとしては初期のものでマイナーな部類に属すると思うが、軽快なヴェルディ節が聴けてなかなか楽しい。録音もまあまあ。オススメである。

 

 

(4)ワーグナー『ワルキューレ』 レヴァイン指揮 メトロポリタン歌劇場 グラモフォン1987

ジェシー・ノーマン(ジークリンデ)、ゲイリー・レイクス(ジークムント)、ジェームズ・モリス(ウォータン)、ベーレンス(ブリュンヒルデ)

ジェシー・ノーマンがジークリンデを歌っているが、これは役にぴったりハマっていると思う。全体としては透明感と抒情的な美しさを重視した演奏で、方向性としてはカラヤンに近い。もちろんカラヤンの完成度には遠く及ばないが、ノーマンとベーレンスが出ているという話題性があり、聴いてもいいCDではないだろうか。

 

(5)リヒャルト・シュトラウス『サロメ』 小澤征爾指揮 ドレスデン・シュターツカペレ フィリップス1990
ジェシー・ノーマン(サロメ)、ジェイムズ・モリス(ヨカナーン)、ヴァルター・ラファイナー(ヘロデ)
これはカラヤン=ベーレンス盤には全然かなわない。小澤なりに演出をいろいろ工夫しているとは思うが、そういう問題ではない。格が違う。

 

(6)モーツァルト『フィガロの結婚』 コリン・デイヴィス指揮 BBC交響楽団 フィリップス1971

ジェシー・ノーマン(伯爵夫人)、ヴィクセル(フィガロ)、ミレッラ・フレーニ(スザンナ)

数ある『フィガロ』の中では無難な出来で、欠点はないが、取り立てて言うほどのものではないと思う。ノーマンの伯爵夫人は似合っていると思います。

 

 

 

 

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