シャーリー・ヴァーレット

Shirley・Verrett

1938~。アメリカ合衆国、ニューオリンズに生まれる。ジュリアード音楽院で声楽を学ぶ。テレビのショーで『サムソンとデリラ』のアリアを歌って評判をとり、1961年、奨学金を獲得してイタリアに渡り、スポレート音楽祭で『カルメン』の主演に抜擢されて大成功を収めた。1963年、ニューヨーク・フィルハーモニー・ホールでリサイタルを開いて故国にデビュー。同年、モスクワのボリショイ劇場で初の黒人歌手としてカルメンを歌った。翌年、メトロポリタン歌劇場にカルメンでデビュー、以降、スカラ座、コヴェント・ガーデンと次々と制覇した。

 

十分なパワーと声域の広さを誇るだけでなく、ムラなく全域にわたってきわめて安定している。ある意味理想的なドラマティコといえるが、リリックな要素がまるでないので演じられる役柄は限られるようだ。

 

日本で聴けるCDは少ないと思われるが、代表的なものはおそらく二枚の『マクベス』である。

 

 

(1)ヴェルディ『マクベス』 アバド指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団 グラモフォン1976

ヴァーレット(マクベス夫人)、カプッチッリ(マクベス)、ギャウロフ(バンクォー)、ドミンゴ(マクダフ)

 

(2)ヴェルディ『マクベス』 シャイー指揮 ボローニャ市立歌劇場オーケストラ デッカ1986 

ヴァーレット(マクベス夫人)、レオ・ヌッチ(マクベス)、サミュエル・ラメイ(バンクォー)、ルシェッティ(マクダフ)

 

(1)のアバド盤は一見してすごい顔ぶれで、オケの迫力も超ド級、録音も優秀で、このオペラのCDとしてはほぼ完璧な出来。(2)のシャイー盤もバランスのよい演奏で決して悪くはないのだが、アバド盤と比較するとどうしても影が薄い。というか、アバド盤を聴いてしまうと他は聴けない感じである。ヴァーレットの歌唱はこの二枚で比較するほどの差はない。

 

(3)ベルリーニ『ノルマ』 レヴァイン指揮 ニューフィルハーモニア管弦楽団 グラモフォン1973
ヴァーレット(アダルジーザ)、ヴァリー・シルズ(ノルマ)、エンリコ・ディ・ジュゼッペ(ポリオーネ)
これは主役を演ずるシルズよりも、アダルジーザを演じるヴァーレットの歌いっぷりが見事。まさにプリマの貫禄で、これではどちらが主役かわからない。ヴァーレットの場合、やれる主役のキャラは限られているし、だからといって脇役にも使いづらいということがわかる。

 

(4)ヴェルディ『ドン・カルロ』 ジュリーニ指揮 コヴェント・ガーデン管弦楽 EMI1970

ヴァーレット(エボリ公女)、ドミンゴ(ドン・カルロ)、カヴァリエ(エリザベート)、ミルンズ(ロドリーゴ)、ライモンディ(フィリップ2世)

ここでヴァーレットはエボリ公女を歌っているが、やはり貫禄あり過ぎである。このCDは御覧の通りスター歌手を揃えているので悪いものが出来るはずもないが、録音の音質がイマイチである。個人的には録音の音質は極めて重要な要素なので積極的に聴く気にはなれない。

 

 

 

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