エリザベート・シュワルツコップ
Elisabeth Schwarzkopf

1915~2006。ポーランドに生まれる。17才からコントラルトとして声楽を学び、ベルリン音楽院を主席で卒業。その後、ソプラノに転身し、1938年、ベルリン市立歌劇場で『パルジファル』の花の乙女でデビュー。1942年にウィーンで最初のリサイタルを開いてカール・ベームに認められ、1943年、ウィーン国立歌劇場に迎えられてコロラトゥーラ・ソプラノとして『セビリアの理髪師』のロジーナ、『後宮からの逃走』のブロンドヒェンなどを歌った。1946年、大戦後の最初のリサイタルをウィーンで開いたところ、今度はカラヤンに認められ、ウィーン国立歌劇場の第一ソプラノとなった。1947年、ザルツブルク音楽祭でドンナ・エルヴィーラを歌ったのを機にリリコに転向。以後、コヴェントガーデン、バイロイト、ニューヨークと活躍の場を広げた。1953年、EMIの名プロデューサーとして知られるウォルター・レッグと結婚した。

美声や声量で勝負するタイプではない。若い頃に声楽の名教師に恵まれ、きちんとした指導を受けているので基本がしっかりしており、スコアに忠実に丁寧に歌うのでベームやカラヤンといった生真面目な名指揮者から好まれたようである。かつ、貴婦人のような気品のある持ち前のキャラで伯爵夫人のような役をやらせたら右に出るものがいない。しかし、逆にいえば独自のキャラに縛られてレパートリーはそんなに広くないようだ。LPステレオ時代になってからはソロ・リサイタルに専念し、ソロアルバムが多く残っているが、録音が良くないのであまり聴く気がしない。


(1)R.シュトラウス『ばらの騎士』 カラヤン指揮 ニューフィルハーモニア管弦楽団 EMI 1956
エリザベート・シュワルツコップ(マルシャリン)、クリスタ・ルートヴィッヒ(オクタヴィアン)、オットー・エーデルマン(オックス男爵)、テレサ・シュテッヒ=ランダル(ゾフィー)

(2)モーツァルト『フィガロの結婚』 ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 EMI 1959
エリザベート・シュワルツコップ(伯爵夫人)、アンナ・モッフォ(スザンナ)、ジュゼッペ・タッディ(フィガロ)、エバーハルト・ヴェヒター(伯爵)、フィオレンツァ・コッソット(ケルビーノ)、イヴォ・ヴィンコ(バルトロ) 

シュワルツコップの出ているオペラCDといえば、この二つに尽きると思う。

あとは、

(3)R.シュトラウス『カプリッチョ』 サヴァリッシュ指揮 ニューフィルハーモニア管弦楽団 EMI 1958
エリザベート・シュワルツコップ(伯爵夫人)、エバーハルト・ヴェヒター(伯爵)、ニコライ・ゲッダ(音楽家)、フィッシャー・ディースカウ(詩人)、クリスタ・ルードヴィヒ(女優)、アンナ・モッフォ(イタリア人ソプラノ)

これはR.シュトラウスのオペラの中ではマイナーなものであり、はっきり言ってオペラそのものの魅力はあまり感じないが、シュワルツコップの気品ある歌声が聴きたいのであれば、これになるだろうか。


外せない名歌手ではあるが、もっと録音がよかったならと、つくづく思う。

 

 

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