ホセ・カレーラス
Josep Carreras

1946年、バルセロナに生まれる。幼い頃から魅力的な声を持ち、ボーイソプラノとして活躍。8歳のときにピアノ伴奏で歌ったのが国営ラジオで放送され、11歳のときにバルセロナ・リセウ大劇場の初舞台を踏む。変声期を迎えると改めて歌のレッスンを受け、1970年、『ノルマ』のフラヴィオ役でリセウに再登場した。翌年、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールでドニゼッティの『マリア・スチュアルダ』のレスター役を演じる。同年、パルマのヴェルディ・コンクールで優勝。以後これをきっかけにスター街道をまっしぐら。1972年にはニューヨーク・シティ・オペラに『蝶々夫人』のピンカートン役でデビュー、1973年にはサンフランシスコ劇場に『ラ・ボエーム』のロドルフォ役でデビュー。続いて1974年にはコヴェント・ガーデン、ウィーン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場と次々にデビュー、1975年にはミラノ・スカラ座にデビュー。30歳にならずしてドミンゴ、パヴァロッティに並ぶ三大テノールのひとりとなった。

美しい声と甘いマスクはそれだけでスター性十分だが、なんといっても表現力が素晴らしい。ここぞというときには声をふり絞り切々と歌うような感じで、その悲壮感は独特のものがある。リリックでありながら非常にドラマチックなテノール。やたらいろいろなCDに出ているが、重宝されるのもわかる。一度カレーラスを聴けば他の歌手では物足りなくなる。パヴァロッティなんぞはただ声がいいだけのでくのぼうにみえる。
カレーラスの出ているCDは非常に多いが、どれも水準以上にある。
特に記したいのは以下のものだが、必ずしもオススメの順番ではない。


(1)ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』 コリン・ディヴィス指揮 コヴェント・ガーデン・ロイヤルオペラ フィリップス1980
カレーラス(マンリーコ)、リッチャレッリ(レオノーラ)、ステファニア・トツィスカ(アズチェーナ)、ユーリ・マズロク(ルーナ伯爵)、ロバート・ロイド(フェルランド)
これはカレーラスとリッチャレリの組み合わせが断然いい。他の歌手陣は超一流とは言い難いが、脇役に徹して二人を上手くサポートしていると思う。なにも配役全てに綺羅星のごとくスターを揃えなくてもいいオペラCDができるのである。

(2)プッチーニ『トスカ』 カラヤン指揮 ベルリン・フィル グラモフォン1979
カレーラス(カヴァラドッシ)、ルッジェーロ・ライモンディ(スカルピア)、カーティア・リッチャレッリ(トスカ)
これはライモンディのスカルピアとリッチャレッリのトスカの緊迫したやり取りが素晴らしい。もちろん、カレーラスのカヴァラドッシもこれが一番という感じだが、このオペラの主役はスカルピアである。ドラマチックに盛り上げるベルリンフィルの迫力のある演奏もいい。録音もいい。このオペラのCDのベスト。

(3)プッチーニ『蝶々夫人』 シノーポリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 グラモフォン1987
カレーラス(ピンカートン)、フレーニ(蝶々夫人)、ベルガンサ(スズキ)
70年~80年代の蝶々夫人はフレーニをおいて他にはない。問題はピンカートンだが、この盤で歌っているカレーラスの他にはカラヤン盤のパヴァロッティがいる。このオペラの悲劇性を考えればカレーラスの方がピンカートンに合っていると考えるのが普通ではないだろうか。

(4)プッチーニ『ラ・ボエーム』 コリン・デイヴィス指揮 コヴェント・ガーデン・ロイヤルオペラ フィリップス1979
カレーラス(ロドルフォ)、リッチャレッリ(ミミ)
『ラ・ボエーム』で売れているCDはカラヤン盤(フレーニ、パヴァロッティ)だろうか。しかし、あたくし的にはこちらが断然いい。どう考えてもロドルフォ役にはカレーラスの方があっている。指揮も録音もこっちがいい。

(5)ヴェルディ『シモン・ボッカネグラ』 アバド指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団 グラモフォン1977
カレーラス(カブリエーレ)、カップチルリ(シモン)、ギャウロフ(ヤーコポ)、フレーニ(マリア)、ホセ・ヴァン・ダム(パオロ)
『シモン・ボッカネグラ』は、ヴェルディのオペラの中では、派手さがなく、なかなか渋いオペラである。カップチルリ、ギャウロフ、ホセ・ヴァン・ダムといった男性歌手陣の低音の魅力が満喫できる。もちろん、フレーニもカレーラスもよい。非常に聴きごたえのある歌の競演。他の盤は聴いたことないが、おそらくこのオペラのベストCD。

(6)ビゼー『カルメン』 カラヤン指揮 ベルリンフィル グラモフォン1982
カレーラス(ドン・ホセ)、アグネス・バルツァ(カルメン)、ジョゼ・ヴァン・ダム(エスカミーリョ)、ミカエラ(カーティア・リッチャレッリ)
バルツァのカルメンはカラスはもちろん、ベルガンサにも負けると思う。しかし、カレーラスをはじめ、他の歌手陣は素晴らしい。カラヤンの指揮もベルリンフィルもうまい。録音もいい。

(7)ヴェルディ『アイーダ』 カラヤン指揮 ウィーン・フィル EMI1979 
カレーラス(ラダメス)、アグネス・バルツァ(アムネリス)、フレーニ(アイーダ)、カップッチルリ(アモスナロ)、ライモンディ(ランフィス)、ヨセ・ファン・ダム(エジプト王)、リッチャレルリ(巫女の長)
これは大スターをズラリ並べた超豪華な布陣であり、それぞれのスターの歌唱を十分に楽しめる。カラヤンのまとめ方もよい。ただ個人的には録音の音質にやや不満がある



(8)ヴェルディ『運命の力』 シノーポリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 グラモフォン1985
カレーラス(ドン・アルヴァーロ)、レナート・ブルゾン(ドン・カルロ)、ロザリンド・プロウライト(レオノーラ)、アグネス・バルツァ(プレツィオシッラ)、ジョン・トムリンソン(カラトラーヴァ侯爵)

(9)ヴェルディ『仮面舞踏会』 コリン・デイヴィス指揮 コヴェントガーデン デッカ1978
カレーラス(リッカルド)、カバリエ(アメリア)、イングヴァル・ヴィクセル(レナート)

この二つのCDは、隙のない配役と演奏で、それぞれの代表盤として安心してオススメできるもの。

 

 

 

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