ガタン ゴトン ガタン ゴトン。

その日、私たちとメイちゃんは列車に乗っていました。

1歳のメイちゃんは、狭い車内をトコトコ走り回ります。

これは危ないと、メイちゃんを抱っこしますが、降ろせ降ろせと、せがみます。

仕方なく降ろすと床に寝そべって、今度は抱っこ抱っこと泣きわめきます。
 

 どうしたものか、まだ終着駅まで1時間近くあるのに…。

周りの人の視線も気になり、背中には冷や汗がベッタリ。

親の焦る気持ちが伝わるのか、ますます激しく泣き叫ぶメイちゃん。

「わあああん!」

狭い車内に泣き声が響き渡ります。

ああ、迷惑だろうな…

申し訳無いな…

と車両をアタフタ歩き回っていると…

「ハーイ!ベイビー!」

 

 前の席から声がしました。

振り向くと、外国人の女性と少年がニコニコしています。

そして2人は、いきなり歌い始め、クルクルと踊り出したのです。

呆気にとられたメイちゃんは、泣く事も忘れ、ケラケラ笑い出しました。

その女性と少年は日本旅行中の家族で、その後お父さんと娘さんも来て、

みんなでキャッキャッと、メイちゃんをあやしてくれました。

その声も大きくて迷惑に感じた方もいたかもしれませんが、

泣き声よりは、はるかに温かい空気が車内に溢れていました。

何より親である私達の心が、ものすごく救われ、感謝の気持ちで、いっぱいになっていました。

 

 普段、何気なく見ていた、ぐずる子どもですが、その親がこんなに肩身の狭い思いをしているとは、

あまり考えたことがなかったです。

もしいつか、逆の立場になって困っている親子を見かけたら、

この外国人の家族のように、歌って踊って笑顔であやしてあげたいなあ!