こんばんは。
ベースを弾いている尾崎です。
さて、
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お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ
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ハロウィンの夜に現れる、オバケ
お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ
やめてくれ!
一体どうすれば、何を言えば、
胸ポケットの菓子を守れるのか
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case.1 「菓子なんて持ってないよ」
普通に考えれば、これでオバケの打つ手はなくなる。なぜなら彼らは菓子以外のものと菓子を比較する物差しを持ち合わせておらず、したがって価値を推し量ることなど到底できぬアホだからである。つまり「じゃあ代わりにその腕時計ちょうだい」と言うオバケはいない。
しかし、実際のところ、我々が菓子をもっていないからといって、それで引き下がるようなオバケはほとんどいないだろう。残念なことに、彼らは「相手が菓子を持っていない」ということから「つまり菓子は手に入らない」という結論を導くこともできない。それほどアホなのである。
case.2 「え、昨日あげたじゃないか」
振り回されてばかりではいけない。我々はオバケたちのアホさをむしろ利用するべきである。ここに1つの信頼できるデータがある。オバケの世界にはカラオケがない。このことを不思議に思ったとある米国の脳科学者は、21世紀の初めの年に記憶についての実験を行った。その結果によれば、オバケは歌を覚えることができない。つまり、彼らには記憶力というものが驚くほど欠落しているのである。だからこそ、あんなひっきりなしに菓子を要求しているのだ。
ともかく、「昨日あげた」と言えばオバケは反論できない。まさに相手の弱点を突く見事な攻撃といえる。これにて人間の勝利!菓子は我が城内にあり!…とはいかないのが、オバケという生命体が真にアホたる所以である。彼らは結局のところ、今日も今日で菓子が欲しいのだ。ただただそれは、本能である。
case.3 「イタズラしなかったら、あげよう」
いよいよ人間は人間の真骨頂である頭脳を使わなくてはならない。「菓子をあげたのにイタズラされるようなことがあれば、それは理不尽だ。しかしお前たちはアホである。したがって我々人間はその理不尽な事態を十分に実現可能性のあるものとして認識し、危惧している。そこでどうだろう。お前たちが11月1日になる瞬間までイタズラをしなかったら、その褒美に菓子をあげるというのは。悪くない話だと思わないか?」こう言おう。この提案をオバケたちが飲み込めば、もうこちらの勝ちだ。なぜならオバケたちは、11月1日になったその瞬間、定義により消えてしまうからである。
case.4 「いくつ欲しいのか言ってごらん?」
正直なところ、オバケたちは我々の提案を飲み込まないだろう。というのも、彼らは今、こうして我々と対峙している今まさにその瞬間において菓子を手に入れたいからである。彼らには過去の記憶もないし、未来の希望もない。今しかない。今欲しいのである。ならばその欲望にまずは寄り添うほかない。
さて、「いくつ欲しいのか」と聞かれたとき、オバケは思いつく限り最大の数を答えようとするけれども、それはせいぜい「4」程度である。そして、不思議なことに、「4」という数の少なさについてはオバケたちも自覚しているのである。そこで彼らは「たくさん欲しい」と言い出す。しかし「たくさん」では我々の問いに答えたことにはならない。するとやはり彼らは「4」と言うしかない。しかしそれでは少ないので言わない。このディレンマに苦しみながらオバケは11月1日を迎えてしまう。我々の勝ち。いささか残酷な作戦である。この作戦の重大な欠点は、アホすぎるオバケが何のためらいもなく「4」と言ってしまったとき、あっけなく我々が負ける、というところにある。
case.5 「僕もオバケなんだ 笑」
もうアホにはアホで立ち向かわなくてはならない。結論をズルズルと後回しにしてゆく人間の得意技はアホすぎるオバケには効かないからである。我々の課題は、このかしこまった頭をフニャフニャにすることだ。さあ、フニャフニャと考えてみよう。
そもそもオバケたちは、目の前にいる我々が人間であるということに確信を持っているだろうか。オバケと人間の背格好は似ていなくもない。オバケたちはこの両者を識別することができるだろうか。悩む必要もあるまい。答えはもちろんNOであり、その根拠は彼らがアホだからである。「僕もオバケなんだ」。そう言うや否や彼らにとって我々はオバケ仲間になり、同時に菓子をねだる相手ではなくなる。
case.6 全裸になる
ちょっとオバケを馬鹿にしすぎたかも知れない。さすがに仲間と人間の区別はできているだろう。それに、捉えようによっては、弱い人間と強い人間の区別などもできているように思える。なぜならオバケたちは全ての人間に菓子を要求するわけではないからである。彼らは彼らなりに「菓子をくれそうな人間」を選んでいる。あ、アイツはイケそうだぞ。とか。アイツはオバケを信じてないから駄目だな。とか。そうやって「イケる」相手を選んでいる。
となると、我々としては、何とかして「イケる」人間から遠ざからなくてはならない。おそらく最も有効な方法は、全裸になることである。一糸纏わず、あらゆる凹凸を大日本帝国の季節風に惜しげも無く晒すことである。アホなオバケでも、これほどド直球な変態が参上つかまつれば「あ、イッてはいけない人間だ」と判断できるであろう。戦わずして勝つ。これが人の道というものである。
case.7 ピンクPスイッチを押す
全裸になってもなお菓子を要求し続けてくるオバケにはどう対処すればよいのか。私の思考は完全に行き詰ってしまった。そうなると検索するしかない。「オバケ 倒し方」で検索すると、案外簡単に答えを見つけることができた。そこには「ピンクPスイッチを押す」と書いてある。「ピンクPスイッチを押すことにより全てのオバケは消える」という。俄かには信じ難い時短テクである。いや、しかし、ピンクPスイッチとは何なのか。そんなものどこにあるのか。全裸になった私はあたりをキョロキョロと見回しながら、ピンクPスイッチなるものがどこにあるのか、探しても探しても分からず、ぐたりとうなだれた。もう駄目かも知れない。うっすら目を開けると、全裸があった。自分の粗末な肉体が視界の半分を占めていた。皮膚が寒え、乾燥している。紫外線に晒された雪のような肌の数ミリ下には赤い血管がびっちりと敷かれている。地面と全裸。視界の上下を分断する形容し難い微妙な凹凸の境界線は、気ままな風に揺られ、まさに神の御業である。私はふと気が付いた。これはピンクPスイッチだ、と。
case.8 そのまま立ち去る
ピンクPスイッチを押した私は、ほんの少しの菓子を守る代わりに、人間としての尊厳を地平線の彼方へとかなぐり捨ててしまった。もう失うものは何もない。家族は、友人たちは、玄関まで駆け寄って私の帰りを喜んでいた愛犬リールは、これまでのように私を愛してくれるだろうか。オバケなどもうどうでもよい。全裸になり、ピンクPスイッチを押した私の前で依然として菓子をねだり続けるようなオバケがいるとすれば、それはオバケ界の頂点に立つアホイストオバケである。このまま私が目の前から立ち去ったとしても、気付かないであろう。
以上
