★★★★☆

 

相米慎二監督『夏の庭 The Friends』4Kリマスター版をセンチュリーシネマで観てきた。

 

まず思ったのは、三國連太郎が佐藤浩市そっくりだということだ。以前は全く似ていなかったのに、佐藤浩市がだんだん父親に近づいてきており、びっくりした。


三國連太郎が演じる老人は、今の感覚では元気すぎて、とても死にそうな老人には見えない。ただ足腰が悪いというだけ(当時の目では年寄りに見えたのかもしれないが)。

 

少年サッカーのコーチに寺田農、葬儀屋に笑福亭鶴瓶、三國連太郎の甥として矢崎滋が出ている。また、葬儀関係者として柄本明も登場する。

 

以降、ネタバレあり。


老人(三國連太郎)は、戦争で現地の妊婦を殺してしまった罪悪感から、終戦後も妻である弥生(淡島千景)のもとに帰らず、一人で暮らしていた。


一方、弥生は三國連太郎の娘を宿しており、未亡人として娘を育てていた。この娘の子ども―――つまり弥生の孫が少年たちの担任の先生(近藤先生)であることが判明する。


だから初めて近藤先生と三國連太郎が出会うシーンで、三國連太郎は先生の顔を見て、ハッとした表情をする。それは、近藤先生が昔の妻に似ていたからだ。

 

少年たち3人は、“古香弥生”という名前を頼りに弥生を探し出し、会いに行くが、彼女はすでにボケてしまっていた。そして、三國連太郎は弥生に会いに行く日に自宅で死んでしまう。

しかし、孫である先生が、葬儀場に弥生を連れてきて、顔を見せると、弥生は記憶を取り戻し「おかえりなさいませ」と言って、崩れ落ちる。

 

同じく、4Kリマスター版が公開されている『お引越し』(こちらも先週鑑賞した)では、舞台が京都で、旅行先が滋賀だったが、今作は神戸の芦屋が舞台。冒頭にモノレールが出てくる。

 

脚本は、結構荒いと思った。「この台詞必要か?」というやりとりがいくつかある。


三國連太郎と少年たちがブランコのある公園で、老人の結婚歴の話を聞いているところや、弥生が焼き場に駆け付け、葬儀の段取りがストップした時ところなどが気になった。

後者では、柄本明が「私、この人知ってるからいいですよ」と言って周囲の人間を取りなすが、意味がよくわからなかった。

 

また、雨の降るシーンが多いが、登場人物の周辺以外は地面が濡れていなかったりして、人工的に降らせていることがわかってしまう。


映像において雨の降り出すシーンは、偶然のタイミングで撮影できるわけがないので、そのシーンがあるだけで、作り物だとわかってしまう。だから、個人的にはやらない方がいいと思っている。せっかくリアリズムで物語を作ってきていても、悪い意味で“異化効果”となり、イリュージョンが解けてしまう。

 

三國連太郎を探しに来た少年が、病院に迷い込むシーンは少し現実離れしている。『お引越し』の終盤、花火大会の後、田畑智子がさまようシーンもそうだったが、幻想的でファンタジック。この2作から共通して感じられる相米の作風は、決してリアリズム一辺倒ではないということだ。この辺りがきっとミソなのだろう。

 

しかし、弥生の娘(近藤先生の母親)が交通事故ですでに死んでいるという設定はひどいと思った。

 

単純に老人と少年たちの交流の話だと思っていたので、後半、戦争の話題が出てくるとは思わなかった。これはリメイクして、終戦の日にテレビで流してほしい。

 

『お引越し』もそうだが、この作品もポスターは今回のリマスター版の方が、オシャレでいい。