流行のコーヒーショップやカフェ。
カワイイやオシャレとは別な雰囲気で
街の喫茶店に置かれている青い電飾のスタンド看板。
クローバをあしらった文字で何とかコーヒーと書かれている。
そんな感じの看板で
黄色の電飾に黒文字で居酒屋の店名が書かれていた。
細い階段を下に降り、入り口がガラス戸になっている店内に入る。

そのおやじは
店内に入ってすぐ左奥のビールサーバーの横から
忙しそうに動きながらも笑顔で
「いらっしゃい!3号ちゃん」
と言ってくれる。

髪は白髪混じりで
ややオールバックもスポーツタイプにセットされてる。
ありきたりの濃い茶色の太ぶち眼鏡。
四角い眼鏡の奥から笑顔の目が優しい。
少しガラガラだが静かで良く通る声。
そんな感じで迎えてくれる。
僕は連れ達と話し、おやじは注文を捌く。
おやじは忙しくても席にきて
僕と言葉のキャッチボールをした。

最近は仕事を理由におやじの顔をみる回数が少なかった。
それでもかわらずあの言葉で迎えてくれる。
「いらっしゃい!3号ちゃん」

おやじの声が懐かしい。

「ちょっと待っててね!」
「いいよ、いいよ、どこでも座りな」
「最近、忙しいの」
「今行くからちょっと待っててね!」
「最近、コレどうよ」
「いい鰹があるから食べる?」
「いつもありがとね」
「体には気をつけなよ」
「貧乏暇なし!いいじゃない」
「今日の貝類はあんまりよくないね」
「生ビール3丁ね。よろこんで!」
「最近どうしてる?あの体の大きいやつは?」
「やな雨だよ」
「6名で予約ね。来てからでも料理は大丈夫よ」
「はい、領収書」
「今日はなんにする」
「3号ちゃん、ありがとね」

おやじを知って何年経つだろう。
色んな思い出を持ち込み料理と一緒にお酒で流し込んだ。
いいちこを抹茶入りのお茶で割るのが好きで
割る前に沈殿した抹茶をマドラーで攪拌する。
コレが気遣いなんだよねえとおやじ語録を僕は言う。





おやじが死んだ。





その場所があるのならば僕もいつか行くだろう。
再会は「いらっしゃい!3号ちゃん」から始まる。
おやじ、呑みなおそう。
今度はもっと家族の話をしよう。