うっとり日和 -14ページ目

重要なのは着地…?

ちょっと翌日まぶたを腫らしているわけにはいかないので
読まずにおとなしく寝ようと思ったのに
けっきょく我慢できずに…案の定……目許を冷やしつつ寝るハメになりました
鬼頭莫宏氏『ぼくらの』最新8巻。

中学生たちが巨大兵器に乗り込んで地球を守るために戦う。
その兵器の動力源は――パイロットの「命」。

アニメ化等々の流れの中で注目された部分というのは
やはり、そういう煽情的な設定だったりするのでしょう。
実際「地球の未来か、ぼくらの“死”か…」だなんて
やりきれない展開になることは火を見るよりも明らかですしね。

でも、私がいっそ感動するのはむしろ、
非日常で非情な物語を描きながら、情を見せる…ということを
淡々とやってのけている。そんな感触。
過剰な演出ではなく、筋で。
暑苦しい感情論ではなく、冷酷なほどの現実的判断で。
なんというのかな…より静謐な手段を選んでる感じがするのです。
そして、そこがすき。

鬼頭さんの柔らかくかそけき筆致は、さらりと乾いた手触りで。
発達途上の少年少女の骨格に似合いすぎるほど似合うそのタッチが、
我が儘で不安定でぽきりと折れそうなのに、案外したたかでしなやかな
彼らの精神性も現しているような気がします。

最初は生意気だったり不気味だったりちっとも可愛くなかったコたちが
みるみる可愛く思えてきて…だからこそ辛くてたまらないのですが
読まずにはいられない。
本誌では佳境に入ってるんだろうな…最新号の「IKKI」の表紙が丁度
新刊合わせで「ぼくらの」だったんですが
書店で見かけただけで涙ぐんでしまいましたよ。。
雑誌で細切れには…とてもとても読めない、な。。

新刊読む度に、鬼頭さんはいったいどこへ着地させようとしているのか
途方もない気持ちになるのですが、
おそるおそる、そして楽しみに、続きを待とうと思います。


ぼくらの 8 (8) (IKKI COMICS)/鬼頭 莫宏

¥590
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お久しぶりです…

ひどい停滞ぶりに自分でも呆れ返ります。
いつ以来なのか、とか、いさぎよく振り返らずにいよう。
……却って再開しやすくなったとかならないとか。。

さてさて、寒中お見舞い申し上げます!
本年も、ひねもすのたり、といった体で
のんべんだらりとまいります。。(結局ダメな宣言…)

昨夜(というか今朝の明け方…)読んだ
中村光氏の『聖☆おにいさん』の一巻が非常に面白かったので
その気持ちの揺らめきをほんのり留めておこうかと思います。
講談社の「モーニング2」で連載中のユル~いギャグ漫画なのですが
イエスとブッダが立川でバカンス中…という「えぇっ!?」という設定で……
でもまぁ、
うっかり奇跡を起こしたり後光がさしたり無条件で動物に好かれたり、、以外は
至って普通(?)の、冴えない風体のにいちゃん二人。
彼らの何気ない日々なのであります。
(これがまた、冴えないTシャツ着てて…毎回、前身ごろセンターに何と書いてあるか密かに楽しみだったり)
とぼけたやりとりが妙に沁みて、とてもよい感じです。

氏の『荒川アンダーザブリッジ』(スクウェアエニックス)も大好きですが
あちらは「触れるモノみな切ってやるぜ」的な笑い。
それでこちらは「いいんじゃん、それで」的な笑い。
描線も『荒川…』より心なしか柔らかな気がします。。
可笑しくて、いとしいなぁ。
でも、扱ってるネタがネタだけに、
怖い手紙とか来てやしないかすごく心配ではあります。。
じ、冗談がわかる人だけ楽しく読めばいいと思うよー!
講談社さん、中村さんをちゃんと守ってくださいねー!

巻末に二巻が「12月発売予定」と。
まだ鬼が笑うレベルの予告にびっくりしましたが、た、楽しみ……!



聖☆おにいさん (モーニングKC)/中村 光

¥580
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日々の糧。

ここで休むとあとで地獄を見ようことは容易に想像できるものの、いま取らねば取りはぐれる…ということで、エイヤッと代休をいただきました金曜日。
のんびり寝たり四角い部屋を丸く掃く程度に掃除したり。
そして
ここぞとばかりに積んであった未読本(漫画から…)を消化。
以下、乱暴に読後雑感。

◆武富智「この恋は実らない」2(集英社/ヤングジャンプ)
すごいな~…お馬鹿さんなラブコメなんだが、その迫力たるや!
感情の迸りたるや……!!
浦沢直樹系の薄味のお顔立ちにダイナマイツバディ。
女の子たちがたまらなくキュートで、輝くんの迷走ぶりがいとおしい。
タイトルが呪いみたいなのがまた素晴らしいな!
もうじき完結巻がでるみたい。早いなぁ~。
あと一冊で風呂敷がたたまれるかと思うとゾクゾクする。。
「EVIL HEART」も買わなきゃ。

◆安野モヨコ「働きマン」4(講談社/モーニング)
弱ってるときに読むとズガンと重いボディーブローを喰らってしまうので
読む時期を窺っていたのだった。やっと読めたー。
あぁ四巻も面白かった。松方はやっぱりいい女だなー。惚れるわ。。
「お休みマン」で胃がキリキリ痛くなり、「ボケマン」が沁みまくった。
そして毎度のお決まりで、首の裏っ側がザワリと粟立って「やべぇ! 私、やれることやってる?」と自問自答せずにはいられなくなって、しばし落ち込む。チーン。
……松方の元カレ・新二がもうもう、ちょっと言葉にならんくらい好みなので、その辺はちょっと、かなり、複雑。。
なんだよなんだよ…口数少なくまた男ぶりが上がってんじゃん。ちくしょう。
「ちくしょう」ってなんだ。。
それはそうと、ドラマの方もすごくよさそうですね。

◆日本橋ヨヲコ「少女ファイト」3(講談社/イブニング)
ミチルがかわいいてかわいいてたまらん…練も大事なら兄も大事で、天秤にかけることすらできないって、どんだけ~!!(い、一度は使っておこうかと…)
うん、ミチルは学ちゃんが幸せにしてくれるって思う。ちょっと泣いちゃったよ。
「G戦場ヘヴンズドア」以降、超イキイキ描いてんのが伝わってきて、読者としてはそれもまたすごくうれしい。「極東学園天国」とか「プラスチック解体高校」とかいま描いてたら思うとおりの最終回に到れたんだろうな~、なんて詮無いことを考えてしまうけれど、あの二作は荒削りなのがすごく魅力なのだし、あの閉塞感と苛立ちの中のきらめきにこそ胸を鷲掴まれてしまうわけで。いまその牙は“演出”や“技巧”でまろやかに削られてしまっていてあの味は出ないんだろうな~、で、幾分かまろやかになったからマスに受け入れられ始めたって側面は否めず。とも思うので儘ならない。
あ、それでも、昔のも今のもやっぱり根っこは一緒なんだなって感じる。
そしてその根っこの感じが好きなのだ。

◆今市子「幻月楼奇譚」2(徳間書店/Chara)
今さんの漫画は正直なところ、とても難しい。何気ないネームやキャラクタの表情に潜められた伏線を取り落とすと、すっかり煙に巻かれてしまうので、細心の注意が必要なのだ。
そんなわけで一生懸命に追わねばならない筋は……すんごい面白い。
私はもともと怪異譚に吸い寄せられてしまうところがあるんだけれど、昨今のホラー映画の波には全然乗り切れてなくて、ラフカディオ・ハーンとか上田秋成とかの香りに滅法弱い。そして今さんの描くちょっと怖い話には、そんな香りが漂う。
そのうえ、幇間の与三郎と放蕩尽くしの若旦那のやりとりが“線の上”って風情で、いい感じにザワザワさせてくれる。BLレーベルだけど、とりわけボーイズのラブって描写もないので、その辺で躊躇う人がいたら勿体無いなと思う。
「百鬼夜行抄」よりちょい色っぽい話が多いのは、妓楼が舞台だから。

◆今市子「僕のやさしいお兄さん」1(芳文社/花音)
今さんのをもう一冊。こちらはまぁ、ボーイズのラブなので苦手な方は御注意。
ああ……面白い! 今さんのファミリータイズ大好き! ただでさえ複雑な家族関係なのにそこにまた面倒くさい感情が絡んで、絶妙にジリジリさせてくれる。。どの人もみんな素頓狂で可笑しいんだけど、その中でも群を抜いてエキセントリックな「おかあさん」がとてもいい。
前シリーズ「楽園まであともうちょっと」も大っ好きだったけれど、今度も続きがすごく楽しみ。(王子の我慢の限界が早く来ればいいと思う……!!)

あと
◆オノ・ナツメ「さらい屋五葉」2、3(小学館/IKKI)
◆久保ミツロウ/小森陽一「トッキュー!!」16(講談社/マガジン)
◆赤名修/真刈信二「勇午 香港編」(講談社漫画文庫)
◆中村光「中村工房」2(スクウェア・エニックス/ガンガンWING)
◆しりあがり寿「ジャンゴ」上(小学館/ビッグコミック)
も読んだけれど、なんかすごい長文になったのでここまで~。
もし、最後まで読んでくれた人がいたら、、、お、お疲れさまでした……!!