記憶に関する病気だと、アルツハイマー病が想起されますが、本書では、日常の「記憶の問題」は、なぜ起こるのか、予防することはできるのか、どのようなものがあるのかを分類し、エラーの原因と対処法を詳述しています。たとえば、顔は思い出すのに名前が出てこなかったり、デジャヴュを経験したり、忘れたい経験を忘れられなかったり、など。


記憶のエラー:7つのパターン

1、物忘れ:transience

2、不注意:absentmindedness

3、妨害:blocking

4、混乱(勘違い):misattribution

5、暗示されやすさ:suggestibility

6、書き換え:bias

7、記憶のつきまとい:persistent


エビングハウスの実験により、ほとんどの忘却は記憶してから数時間以内であり、それ以降になると忘却のスピードが落ちることが発見されました。このことは、「その後の多くの実験でも繰り返し証明」されています。


記憶が失われるのは、「新しい情報を合成したりコード化するとき」です。その経験が生涯記憶に残るか、あるいはエビングハウスの忘却曲線をたどって忘れられてしまうかは、記憶が誕生する瞬間に起こる「変容」が、重要だと述べられています。変容とは、短期記憶から長期記憶への移行を指します。


どのように変容させるか?

「コード化のプロセスが丁寧なほど、記憶の喪失が少ない。」つまり、記憶したい事柄の認知や理解が深いほど、長期記憶へと移ります。たとえば、覚えたい情報を既に知っている情報に関連付ける。または、「時間ベース」の作業を「出来事ベース」に転換することで、予定を忘れるのを防ぐことができます。たとえば、毎日、「目薬を4回さす」という時間ベースのことを、「起床後、昼食後、夕食後、就寝前」という出来事ベースに関連させると、忘れるのを防げる可能性が高まります。


「記憶は現在のために過去を書き換え、現在の経験を将来必要となったときのために貯え、そして望むときに過去を再体験させてくれるのだ。ときに記憶は問題を起こすものの、それは欠点であると同時に長所でもある。記憶は、私たちの心と世界の間を、時間を超えて橋渡ししてくれるのである。」と本書は、結ばれています。