日本の公立学校の制度は、過去40年に亘って、東京を中心に、社会の格差と不平等を拡大する方向に働いてきました。高校受験の過当競争を無くすとして60年代に導入された学校群制度は、その逆に、中学受験は当たり前、小学校、果ては幼稚園のお受験も珍しくない世の中を作りました。その愚策の後遺症から立ち直らないうちに、違う角度から、また新たな愚策が導入されようとしています。
教育バウチャー制度です。義務教育に市場原理を導入しよう。お金を払っているのだから、われわれはいい教育サービスを選ぶ権利がある。そのために教育バウチャーというものを導入しよう、というのです。もっともらしく聞こえます。安倍晋三政権で誕生した教育再生会議などで議論されていますが、日本の実態にはとても合わない制度です。
バウチャーとはクーポン券です。今考えられている教育バウチャー制度では、小中学生の子供を持つ親が、バウチャーを持っていけば、行きたい学校が選べます。今までの学区の縛りはなくなりますから、これまでは制限されていた越境入学が堂々とできる制度といってもいいでしょう。公立の小中学校を自由に選択できます。そうして集まった生徒の数に応じて各学校に予算を配分する仕組みです。生徒獲得競争をさせることで学校の教育「サービス」の向上をさせる狙いがあるそうです・・・