迷い込んでしまった
ここはいったい何処だろう
お酒がいっぱい並んである
ベストに蝶ネクタイの
おじさんが静かにグラスを磨いている
なんか怖そう
あと男の人と女の人が
座っているだけ…
暇だし面白そうだから
近寄って話を聞いてみよ
「なんか今日、元気ないんちゃう?」
「そんなこと……」
「絶対おかしいわ。暗い顔してるし、お酒もちっとも進んでないし。君の大好きな酒やんか!
すみれが好きな君にマスターが提案してくれたブルームーンやで。
たしかバイオレットリキュール使ってんねんやろ。
ニオイスミレの花の色と香りを移し取った酒で…
えー……思い出した。
オレンジ、レモンの果皮とかコリアンダー、ビターアーモンド、バニラ、クローブ、シナモンが入っとって中性スピリッツ、水、シロップ、着色料が入っとんねやろ。毎回聞かされとったから憶えてもうたがな!
ドライジンとレモンとこのお酒をシェークしてカクテルグラスに注いだら、君の好きなブルームーンの一丁上がりや。」
「バイオレットリキュールの瓶をよく見て…
パルフェタムールって書いてあるでしょ。アムールっつ、アモーレって意味で
愛なのよ。英語読みだと
パーフェクト・ラブ!
つまり完全な愛って事。
最近、貴男との事、色々
考えちゃって…
青い月……ブルームーンなんて存在しないでしょう。この世の中に完全な愛なんてないんじゃないかって…」
「あほ。そんなことあらへん。完全な愛でお前を愛し続けたるがな!」
「あ、こんなとこに虫が

(うぎゃ

俺が蚊やったん忘れてた。
死ぬ


