オバマ大統領の「バイ・アメリカ」政策 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 オバマ大統領は今後2年間で300万人の雇用創出を目標に約74兆円の景気刺激策を実施するとしています。そして、オバマ大統領自身が「ボロボロの道路や橋、学校を新しくする」と繰り返しているように、景気対策法案には橋や道路の建設などの公共投資も当然に含まれます。

 その際に、(公共投資には)アメリカ製の鉄鋼のみ(外国製の鉄鋼購入を禁止)を使用する条項が盛り込まれたことが世界に波紋を呼んでいます。いわゆる「バイ・アメリカ」条項。こうした条項は保護主義の温床になるとしてカナダ、日本、オーストラリア、EUなどの鉄鋼業界が強く非難。

 保護主義についてはWTO(世界貿易機関)が監視機関として常時チェックしています。特にNTB(non-tariff barriers)と呼ばれる非関税障壁については厳しくチェック。1930年代のブロック経済の歴史的経験から、世界経済に保護主義が蔓延るのを防止する役割を果たしています。

 特に、現在のような不況時には国内で販売できない商品を海外にダンピングすることはよくあること。

 タイ政府は既に国内での輸入商品ダンピングに厳しく目を光らせています。また、タイ製品の海外でのダンピングも同様。タイが海外でダンピングしているから、タイへダンピング輸出するというダンピングの応酬を警戒しています。こうした応酬は、結局は保護主義へと繋がるからです。

 今回の米国政府の「バイ・アメリカ」条項は公共投資に限定したもので現実には大したインパクトはないかもしれません。しかし、EUの景気刺激策には「バイ・EC」条項は無いし、中国が昨年11月に発表した4兆元(約5860億米ドル)の大型公共投資にも「バイ・チャイナ」条項なぞはありません。たしか、数年前にタイ政府が「バイ・タイランド」キャンペーンを実施したときに、在タイ・米国大使館は敏感に反応。即刻、タイ政府に「貿易収支を歪めるものである」と抗議したはず。

 リアル経済に与える影響は無視可能な程度でも米国がこうした「原則」を無視した政策を採用するのは「シンボル」としては良くない前兆だと思います。

 ところで、米国の2009年1―3月期国債発行による資金調達額が史上最高の4930億ドル(約44兆円)にのぼると予想されています。昨年10月からの国債発行は半年で1兆ドルを突破。金融危機対策で歳出が膨らむ一方、景気後退で税収が落ち込むのが主因です。しかも、これは景気対策分は考慮しておらず、実際の国債発行額はさらに膨らむ公算が大きいとのこと。

 半年で1兆ドル資金調達するのは良いとして、一体、その金利分はどうやって支払うのでしょうか。

 どうやら、米国政府上層部では米ドルを印刷して支払うということで既に「コンセンサスが固まっている」と思われます。