タイ国際航空(銘柄コードTHAI)が「乱気流入り」 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 バンコクポスト紙(1月23日)によると、タイ国際航空(THAI)は22日、社債発行、銀行借り入れで計340億バーツの資金調達をする計画を明らかにしました。

 世界同時不況による旅客搭乗者数減少やPAD(民主市民連合)によるバンコクの2空港閉鎖の影響に加えて、昨年7月以降の原油価格急落により”ジェット燃料”の先物予約取引(フォワード取引)で損失を計上したことが資金繰りに悪影響を与えている様子。

 2009年中に短期借入金返済のため150億バーツ、運転資金に充てるため190億バーツを調達する計画です。

 タイ国際航空は株式51%をタイ財務省が保有するタイ国の”旗艦”(フラッグシップ)航空会社。同財務省はタイ国際航空を支援するために借入金保証をする見通しです。タイ・コーン財務大臣は「旅客搭乗者数が通常レベルに戻れば、運転資金には余裕ができる」とメディア向けに発言しています。一方で、経営陣には「経費削減、路線縮小、経営合理化などの長期経営計画の提出」を求めた様子。
 
 気になるのは、タイ国際航空のナロンサック社長代行は前日21日に、エアバスの中型機「A300-300s」6機を予定通り、リース契約で導入することを明らかにしていることです。4月に引き渡し予定。資金難から導入延期を要請するとの憶測が浮上していましたが強行する模様です。

 ナロンサック社長代行は翌22日の財務大臣の発言内容を知っていたと思われます。本気で経営再建をする意思があるのか疑問に思いました。

 順番としては「先ずは」リストラによる赤字脱出。それから設備投資(航空機導入)ではないでしょうか。この辺にお国柄の違いを超えた「親方政府企業」の甘さがあるのではと感じました。タイ航空は2008年1~9月期の最終損益が66億1,100万バーツの赤字。

 一方、いち早く経営再建に取り組んだノックエアは22日、2008年10~12月期の業績を発表しました。こちらは8200万バーツの黒字転換。ノックエアのCEO(最高経営責任者)パテー氏は「我々はICU(集中治療室)から脱出。やっと正常な状態に戻った」とコメントしています。

 ノックエアはタイ資本の格安航空会社(Low Cost Carrier, LCC)でマレーシアの同じくLCCであるエアアジアに対抗する形で2004年に設立されました。その後、ノックエアは2008年初にインド便など海外路線拡充の失敗から1億バーツの累積赤字を抱え経営危機へ。いち早くドラスティックな経営再建に着手しました。

 経営再建策は従業員の半数に当たる1000人のリストラ、ボーイング737機を3機にまで削減、運行路線縮小、発着回数を半分に削減、従業員の賃金カットといったドラスティックなもの。

 こうした経営努力の結果、2008年12月だけで同社は逆風の中、4200万バーツの利益を達成しています。また、ノックエア経営陣は景気回復して搭乗者数が回復トレンドになれば、来年、ボーイング機を2機追加するとしています。

 果たして、タイ国際航空にはノックエアのようなラディカルな経営再建が可能でしょうか。