夫婦で仕事をしながらバンド活動を続けて10年くらいになります。
夫であるバンマス(バンドマスター:作曲や作詞を手掛けている人がその役割になることが多い)が、うちのバンドの曲を全て手掛けてくれています。

私は恥ずかしながら、バンマスが曲作りをしている姿をあまり見たことがありません。
作曲するときは誰か人が居ると気が散ってしまうのか、私が寝たあとや出かけている時に作曲をしているようです。
同居している上に休みもバンド活動がしやすいように同じ休みにしており、1人になる時間などあまりないように思えるのですが、夕飯を食べているときにふいに「そういえば新曲出来たよ」とさらっと言われたりします。
しかも結構な頻度で。

バンマス本人としては、それでも曲が調子良く出来るときと、出来なくて苦しむときと波があるようです。
調子が良いときは毎週スタジオで新曲出来たから合わせてみない?と言うほどのハイペース。
調子が悪くても数ヶ月ほどで新曲宣言しているので、やはりハイペースです。
いつ寝てるの?大丈夫?と心配になるくらい。

そうは言っても、そこからバンドで合わせてみてイメージと違えばボツになったり、当初から全く違ったアレンジになったりするので、ライブでお披露目出来るのは膨大な曲の数曲しかない、なんてことが多いです。
これは他のバンドさんでもあるあるかもしれません。

ボツ曲が続いても、コンスタントに曲を作って持ってきてくれているバンマスがいるからこそ、私もバンド活動が続けられていると思うと、せめて感謝の気持ちを忘れないようにしたい。
そこで私たちバンドメンバーがやっていること。
「褒めまくる作戦」です。

一言で書いてしまうととてもシンプルな感じがしますが、実はとても難しい。
第一に、バンマスは元々自己肯定感が高い人です。
これは私の個人的な意見ですが、ロック、パンク、ガレージ系のバンドの作曲者って自己肯定感が高い人が多い気がします。
他のジャンルの曲だと当てはまらない場合もあるので、一概には言えないのですが。
ロック、パンク、ガレージ系バンドの作曲者に「この曲かっこいいですね。」と伝えると、そうでしょう、そうでしょうといった反応が返ってくることが多い気がします。
バンマスも大抵そんな反応が返ってきます。

そこで、「あ、この人は褒めなくても大丈夫な人なんだな。」と思って放置していると、バンマスの曲作りのモチベーションが段々下がってきます。(何回も経験済み)
なので事あるごとに褒めまくるようにしています。
「この曲のソロ最高!」「歌い方が良いね!」「リフがかっこいい!」「天才!」「才能の塊!」
大体このようなフレーズを使い回して褒めていると、「本当にそう思ってる?」とバンマスの中に疑惑が生まれてきます。
こちらの語彙が少ないせいでもあるので、ここからもう一踏ん張りして、半ば自棄糞になりながら褒め続けていると、やっと嬉しそうにまた曲を作り始める…こともあります。

結局バンマスは曲作りのモチベーションに私たちの言葉は必要でなく、作ろうと思ったときに作っています。
じゃあ褒めても意味ないのかというと、そうではなく、やはり作ったら褒めてもらいたいらしく、そういったときに適切に褒めることが重要になってきます。
ここまで読んでくださった方は薄々勘づいていると思いますが、バンマスはとても繊細な生き物なのです。
例えるならゴリラと同じくらいの繊細さを持ち合わせている生き物、それがバンマスなのです。

バンドメンバーとして、家族として、バンマスの創作意欲が失われないようにサポートすることが私の役割だと思い、今日も新曲に入れるフレーズや新しい褒め言葉をあれこれこねくり回しています。