もし儲けだけにこだわるのであれば、うちのようなやり方でなく、もっと簡単な方法があるのはわかっています。でもうちが目指しているのは、カッコいいお店です。
揺るぎない実力とイメージを兼ね備えたブランド店です。クオリティの高い料理を自信と余裕を持って提供できるお店、そして本気でサービスの頂点を目指しているお店です。
お好み焼きと鉄板焼きからスタートし、今は焼肉店、寿司屋まで含めて全10店舗。
鉄板焼を軸としたうちならではのサービスが提供できれば、今後もいろんなスタイルのお店を出店していくつもりです。
ここで、ちょっと紹介したいのは、2007年の晴、東京・丸の内に出店させて頂いた「鉄板焼 天」のことです。新丸ビルといえば、ご存知丸ビル同様、日本有数の一流企業が集まる丸の内のなかでも特別に敷居の高い商業ビルです。
そんな一流のビルにお店を出せる事自体、たいへん恵まれているといえるでしょう。ビル自体が日本中に、いや世界的にも通用するランドマークですから、そこに入っているお店はいずれも名の知れた優良店ばかりです。そんな一流の環境のなかで「坪単価の売上が月平均90万円。新丸ビルの全店舗でナンバーワン」という実績を出せているのはなぜか?それはうちならではの労働システムが有効に働いているからです。
テンスターズダイニングは、1981年に初めの一歩を踏み出した原宿時代から長年にわたり、いろんな経営スタイルを試してきました。
朝の5時や6時まで店を開けていたこともあります。
ですがある時、「毎日働いてばかりでは人間として半人前ではないか。あいた時間を使って、豊かな感性を磨くべきではないか」と思ったんです。
そこで、だんだん営業時間を短くしていき、最後は1日わずか4時間半まで短縮しました。夕方6時にオープンして10時半には閉店です。
これでどこまで売り上げを維持できるかなー、なんてみんなで言いながら、結構おもしろがっていました。すると意外にも、売り上げは上がっていったんです。
毎日お客さんが並んでいて、「なんでかな」と最初は戸惑いましたが、そのうちわかりました。
短時間で集中して仕事をするから、生き生きとパワフルにできるんです。
労働時間が短いぶん、活力は十分あるわけですから、顔色もいいし元気もある。自然にいい笑顔が出る。いいほうにいいほうに循環していくわけです。
現在うちの労働時間は一般企業と同じ8時間、他の飲食店より短くしているのは、その時の経験から学んだことです。
スタッフにはいつも元気いっぱいで活躍してもらおうという信念を貫いているからこそ、ビジネス界の一流ブランドである新丸ビルのお客さんたちが、ご贔屓にしてくださっているのだと思います。
名実ともにブランド店を目指しているうちにとっては、とても光栄なことだと身が引き締まる思いです。