その中でも私が最も気遣いを感じるのは、部屋の中にその部屋を掃除した責任者の名前を書いたカードが必ずあり、ホテルの規模が大きいか小さいかに関わらず、部屋の引出しの中や机の上に必ず「支配人への手紙」が置かれていることです。開けてみると、中には大体宿泊の感想に関するアンケートが入っていて、ホテルに対する提案を書く欄もあります。私はアンケートに書き込んでカウンターに持っていったことがありますが、驚いたことに、プレゼントをもらってしまいました。こうした細かいことは取るに足りないことのように思えますが、これらによって私は彼らの心配りを一つ一つ感じることができるのです。 六月に大阪に講演に行った時の、梅田駅付近のあるホテルのことを思い出します。その日、私はコップに入った水を全部飲まないまま、慌ただしく出かけました。夜部屋に戻って、私は感動的な光景を目にしました。そのコップは少しも動かされず、水が捨てられもせず、上には紙が置かれ、そこには「掃除の時に判断できなかったので、このままにしておいたことをお許しください。」と書いてありました。もちろん彼らは、私のために新しいコップも用意してくれました。普通なら、これを飲み残した水と判断して、捨ててしまってもおかしくありません。でも水を残しておいて、部屋に戻ってから飲もうとするお客さんもいるかもしれないと考えて、彼らは何の処理もしなかったのです。私はその紙を読んだ時、掃除係の人が机の前で、一杯の水のために慎重に考えている様子が頭に浮かびました。たった一杯の水のために?いいえ、たとえたった一杯の水であっても、と言うべきでしょう。お客様のものであれば、すべて大切にするという態度を持つことが、私に深い印象を残したのでした。 |
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