中国“自爆”覚悟の香港支配 米は切り札「香港人権民主法」習氏の喉元に刃を突きつけ
北京で開かれている共産党主導による全国人民代表大会(全人代)では、習近平政権が香港に対して国家安全法適用を決める構えだ。トランプ米政権は香港の高度な自治を認めている「一国二制度」を骨抜きにすると反発し、対中制裁を辞さない姿勢だ。
トランプ政権は2018年に米中貿易戦争を仕掛けて以来、中国にハイテクと並んでドルを渡さない決意を日々刻々強めている。
実のところ、中国からの資本逃避も、中国本土への外国資本による投資も香港経由である。実質的にはドル本位の通貨・金融制度の中国にとって国際金融センターの香港は死活問題だ。
だからこそ毛沢東以来、歴代の共産党指導者は「自由な香港」を容認してきた。ところが習氏はその香港を全面支配しようと焦る。
これに対し、ワシントンには切り札がある。米議会が昨秋、成立させた「香港人権民主法」である。トランプ氏はこの法により、いつでも習氏の喉元に刃を突きつけることができるのだ。
同法は、香港が中国政府から十分に独立した立場にあり、優遇措置適用に値するかを国務長官が毎年評価するよう義務付けている。米国は、香港で人権侵害を行った個人に対する制裁や渡航制限を課すことができる、というのが一般的に報じられている概要だ。
同法の条文に目をこらすと、メガトン級破壊兵器の起爆装置が仕込まれている。「1992年香港政策法」修正条項である。
香港政策法とは97年7月の英国による香港返還に合わせて92年に成立した米国法で、香港の高度な自治の維持を条件に、香港に対する貿易や金融の特別優遇措置を、対中国政策とは切り離して適用することになっている。
優遇措置は通常の国・地域向けの場合、貿易、投資、人的交流が柱になり、香港も例外ではないのだが、ただ一つ、香港特有の項目がある。それは「香港ドルと米ドルの自由な交換を認める」となっていることだ。
「92年香港政策法」の修正条項で、米政府は香港の自治、人権・民主主義の状況によっては「通貨交換を含む米国と香港間の公的取り決め」も見直し対象にできるようになったのだ。
香港の通貨金融制度は「カレンシーボード」で、香港金融管理局が香港ドルの対米ドル・レートを固定し、英国系の香港上海銀行、スタンダードチャータード銀行と中国国有商業銀行の中国銀行の3行が、手持ちの米ドル資産に見合う香港ドルを発行する。つまり、香港ドルを米ドルに自由に交換できることが前提となっている。
中国本土への海外からの対中直接投資や本土からの対外直接投資の6割以上は、香港経由である(グラフ参照)。
香港ドルが米ドルとのリンクを失えば、香港は国際金融センターではなくなる。香港に拠点を置く日米欧の企業、銀行にとっても打撃になるが、同時にそれは、ドル本位である中国経済システムの崩壊危機を招きかねない。
習政権は「自爆」リスクを冒すほど追い込まれているのだ。
https://www.sankei.com/economy/news/200530/ecn2005300010-n1.html
香港は国際金融センターとしての位置づけがあり、今後の展開が本当に注目!
特に、香港ドルと米ドルの関係性は覚えておくべきことだね。