※ネタバレあり 

※筆者の主張の要約なので、ストーリー解説ではありません。


  1.どんな話?

 

 コロナ禍において、自転車メッセンジャーの非正規労働で毎日をやり過ごす若者の姿を描いた作品。



 怪我や事故による故障と隣り合わせの不安定な生活を送りつつ、同棲相手(もちろん結婚していない)が妊娠したことを機に正社員などちゃんとした生き方を望むも、癇癪から傷害事件を起こす。




 後半は刑務所での生活から本当の自分、生き方について悟り(?)をひらく。



  2.そもそもブラックボックスって?



中に何が入っているかわからない箱


筆者の作中での定義は以下のとおり(重要)

中に何かがあるということは当然見えている。

しかし、入ってみないと分からないし、入れるかも分からない。

 

 配達先の会社や、毎日見ている近くの民家がそれで、人が出てくるので、中で仕事や生活の営みがあると思われる。

 


 しかし、具体的に何をしているか全くわからない。


  3.作中に見える対比


筆者の主張は以下の対比に基づいて展開する


『安定』した生活

『不安定』な生活


安定した生活とは


正社員、刑務所での生活(=制度)、寝ること、同棲相手と話すこと、安定した仕事、ハローワーク。




不安定な生活とは


刑務所での新しい作業、事件。パンク、事故、明日のこと、未来のこと。



⇒その時になるまで、あるいは起こってみないとわからない事



これって...そう!

これがブラックボックス


  4.筆者の主張


 安心できるような日々、安定した生活を求めていた。煩わしい人間関係からは、離れたい、関わらない、一人でいたい。



 しかし、実は安定はあまり欲しいものではなく(すぐに癇癪を起こすのは欲しくもない安定を求めていた心の矛盾・乖離が原因)、常に遠くに行きたい(=不安定であること)と願っていた。


 どうなるかは、起こってみないと知ることはできない。これがブラックボックス。


→それが当然で、それでいい
というのが筆者の主張。


 最後は、刑務所に送られてきた同棲相手からの手紙の返事を書かず、週刊誌の間に挟んで物語の幕が閉じる。