その日校門で待ち合わせをしていた、別に彼女でもないしデートするわけでもない。

 

引っ込み思案だから女の子を誘うなんて無理。

 

「僕の家は谷畑中の前だよ。」

 

「あらじゃあバスは、学園行き?」

 

友達との会話を隣で聞いていた相原真緒だった。

 

「うん、、そうだよ。」

 

高校入学したばかりで誰それが可愛いとかそんな話を男子はしてた。

 

相原はその中でも良く話題に出る子だった。

 

「私山台中よ。いつも自転車通学してるのだけど、今日はバスで来たのよ。バス停はどこ?」

 

「三叉路です。」

 

思わず敬語を使ってしまった。

 

「あらそこから行けるのね。ねえ帰り一緒に帰ってよ、私意外とバス苦手なの。」

 

周りの目が一斉に僕を見た、「え!」てな感じで。

 

うん、とうなずくしかなかった。

 

「じゃあバス停ね。」

 

帰りの会が終わると相原はにこっとして言った。

 

昇降口で

 

「がんばってねえ♪」

 

クラス委員の女子、橋本直子に言われた。

 

逃げたい気持ちと、ドキドキ感と、照れくささと優越感(それ程でも無いが無いと言ったら嘘になる)がブレンドされていた。

 

『乗るのか乗らないのか?』

 

バスの運転手は停留所にたたずむ僕を迷惑そうに見ている。

 

「乗らないの?」

 

「いやちょっと。」

 

中学の同級生だった大橋は怪訝そうな顔をしていた。

 

クスクス笑いながら乗り込む女子もいる、バスの中で友達に僕を指さして話しているのが見える、友達の女の子は「おお!」みたいな顔してる。

 

もう逃げたい。

 

「ごめん待たせちゃったあ。」

 

まあ停留所で彼女は良く話すこと、高校の上級生、クラスメイト、他クラスの生徒、なんでこいつと美少女が一緒なんだと、まるで奇跡を眺めてるようにたちまち列の間を開けてくれる。

 

「ねえ、山野君鞄重たそう、教科書全部持ってきたの?」

 

「はい。」

 

「真面目ねえ、私は英語と数学と古典だけよ。」

 

まあ、僕も家ではそれしか予習しないけど。

 

バスに乗る、なぜか二人で席に座れる、というか皆席に座らないでいる、チラチラと僕らを見ながら。

 

目の前の席の大人の人達なんか呆れた顔をしてる、『なんでこんな男のこと女優さんみたいな女の子が仲良くしてるんだ?』みたいな。

 

「次が三叉路ですよ。」

 

「降りま~す。」

 

相原は大きな声を出した。

 

「ボタンを、押すんだよ。」

 

僕は真っ赤になって相原に言った。

 

まあバス内クスクスと言いうか、笑いをこらえているというか。

 

「ごめんなさい!バス乗り慣れてないのよ。」

 

相原は大して気にもせず話した。

 

僕は案内しなきゃあいけないかと席を立ったら、ブレーキがかかった。

 

「うわ!」

 

ちっちゃい体に重たいカバン、思わずよろけた。

以前本当に転がったことがある。

 

「大丈夫?」

 

相原は僕を後ろから支えてくれた、あの当時160㎝以上ある女の子はずいぶん大きく見えたから、まるで大人に抱きかかえられたような感じだ。

 

おまけにふっくらした彼女の胸が僕の頭にあった。

 

「はい、あ、ごめん」

 

バスを降りた

 

「じゃあまた明日ね。」

 

バスの中の友だちに相原は手を振っていた。

 

バスの乗客の視線がずっ-と僕らを追っている。

 

「ねえ山野君、谷畑中のどちら側?っていうか住所は?」

 

「西門がわ、谷畑5-25-1。」

 

「へえそうなの、私谷畑6-12-1よ。私の家は山台中と谷畑中の学区の境界だったの、どちらでも選べたのよ。」

 

「じゃあ山崎さんの家知ってる?」

 

「お隣よ、あそこは社宅なのお父さん同士が同じ会社なの。」

 

三叉路中央通りから相原は右、僕は左。

 

「ありがとう、山野君バス停からの行き方わかったわ。今朝は1つ先の停留所から乗ってしまったの。」

 

相原は手を振って別れたというか中央通りから家に入るのが見える。

 

家に入り際相原はこちらを見てまた手を振った。

 

『なんか後つけてたみたいに思われないかなあ。』

 

翌日は何人かからは聞かれただけだった。なんだろう、あり得ないカップルだから噂にもならなかったんだろう。

 

それから僕に楽しみができた、雨の日相原もバス通学する、その時またお話しできるのだ。

 

帰宅部の僕と違って相原は委員会に出たり、バスケの練習で帰りは同じになることはほとんどない。

 

そして高校二年,クラスは別になった。僕は母に頼んで自転車通学することにした。せめて登校時会えるように。

 

でもなかなかそううまくいくわけでもない。雨の日僕もバスで行く、雨の日が嬉しい日でもあった。

 

彼女は短大に進学し、僕は一浪。町で出会うこともなくなった。

 

25歳の年、同窓会が開かれた。

 

「相原結婚したらしいよ。」

 

ちらっとみんなの視線を感じた。

 

帰り道僕は相原の家の前に行った。

 

もっと早く越えればよかった三叉路中央通り。

 

僕のバス通学は終わった。

 

今年僕の息子が同じ高校に進学した。初登校の日僕は息子をバス停まで見送った。

 

同じセーラー服の女子生徒がいる、背の高い相原真緒そっくりの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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普段の僕は、言葉遊び、、、早く言えばダジャレ、が生き甲斐?かもしれません。 

言葉遊びと絵本(大人向けかなあ)、を出しました 

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