『坊やなんで泣いているんだろう?』


私は天使、ももいろ天使。暮の空を飛んでいたんだ。

え?天使は白だろうって?そんなことはないんだよ。

天使にはいろんな色があるんだよ。

天使はね、光の中から生まれるんだ。私はたまたま赤と白の間で生まれたんだよ。

それでももいろになっちゃったんだ。

まだ生まれたばっかりで羽も生えてないんだ。

ピンクちゃん白


公園のベンチで泣いている男の子がいました。

そばには同じ年くらいの紺のジーンズのつなぎを着たショートヘアの女の子がしきりに男の子を

慰めていました。

「ねえ、もう泣かないの。私はゆきちゃんがももいろでもかまわないと思うよ。」

「だって、女の子みたいって言われるの嫌だもん。」

「ミクだって男の子みたいだってしょっちゅう言われるよ。」


女の子はミクちゃんって言うらしいね。


「ぼく、ゆきおなのにお母さんがゆきちゃんっていつも呼ぶから、わーいゆきちゃあん!ってか

らかわれるのも嫌なんだ。

「だったらミイだってそうよ、みんなより背が高いし、みんなミイ君って呼んじゃうし。

アタシはレディなんだからね。」


ははあ、あの子たちは仲良しなんだね。男の子みたいな女の子と、女の子みたいな男の子のカッ

プルなんだね。


「でもなんで、ももいろのセーター着てきたの?」

「だって、お母さんがこの色可愛いってデパートで僕に着せちゃったんだもの。」

「嫌だって言えばいいじゃん!」

「それが、、、嫌じゃなかったんだよ、、、。」

「そうだよね、ゆきちゃんは、あっ、ごめんね、気にしてる?」

「ううん、ミイ君は平気。幼稚園から一緒だもの。」


ミイ君と呼ばれミイ君は思わずガクッ、私ももいろ天使もガクッと来ましたが。


「ゆきちゃんのお部屋、お人形さんやドールハウスあるものね。女の子の好きなものが多いよね。あたしはそれで探偵ごっこしちゃうけど、、。」

「ミイ君のお部屋は戦隊ヒーローや、刀、ライフルのおもちゃとか、いっぱいあるよね。」

「ゆきちゃん、それで剣を下げたお姫様ごっこしてたじゃない。」

そうかあ、この子たちはそれぞれ好みが他の男の子、女の子と逆なんだ。


『よし、私も人助けしなくちゃね。』


『おっと、このまま現れたらびっくりしちゃうだろうな。ドレスみたいな天使服だからね。』


『これでいいかな?』


ももいろ天使は、二人と同じ年格好の人間に変身しました。

『もうじきクリスマスだしなあ、良いことして羽をもらわなくちゃ天国に行けないもの。』


「こんにちは?」

ミイ君とゆきちゃんはびっくりしました。

だってそこにはももいろの半ズボンにももいろの上着、ももいろのベレー帽をかぶった男の子?いや女の子?どちらともわからない子供が立っていたのです。

「こんにちは!?」

「君は誰?」

「私は、、もも、えーと、モモです。」

「モモちゃん、このあたりの子じゃないよね。」

「うん、まあね、でもあなたがたのことは知ってるよ。それに今君たちのお話しを聞いてわたしと同じだって思ったから話しかけたってわけです。」


『人間の子供の言葉まだ難しいな』


しばらく、ミイ君、ゆきちゃん、モモはお話しをしました。


「そうかあ、じゃあそのセーターいらない?」

「いる!僕は好きなんだこのセーター。なんで着ちゃいけないか分からないもの。」

「うんそうだよね、もも、いやモモもこの色すきだもの。」

「モモちゃんは平気なの?いじめられない?いじめっ子がいたらミイがやっつけてやるから。」

ミイ君は腕まくりをしました。

「大丈夫、わたしは暴力、、、いやケンカはしないから。」


『子どもには難しい言葉使えないな。』


「着たいけど、着るとからかわれる、でも脱ぎたくない。」

ゆきちゃんはまたしくしく泣き始めました。


「ゆきちゃん、泣かないでね、ほらモモなんか全身ももいろだよ。」

「ちょっとやりすぎな気もするけどね。」

ミイ君はくすっと笑いました。

「?なぜでしょう、いや、なんでですか?」

「だってさあ、靴もももいろ、靴下もももいろ、ジャケットもももいろ、髪の毛も薄いももいろ、おまけに蝶ネクタイまでももいろなんだもの。」

「そうだね、手に持ってるお星さまがついている杖?それもももいろだよ。」

ゆきちゃんもにこっとしました。

「いやそれはね、まあ、私は、モモは元々ももいろで生まれたからね。それに人間の子供の服はまだよくわからないのです。」

「ももいろで生まれた?」

ゆきちゃんが聞きました。

「本当はタレントさんとか?」

すかさずミイ君

「そうです、ももいろで生まれたのです。皆さんにお会いするため慌ててこの格好に変身したのです。」


「プーッ、なんかももいろ戦隊とかヒーロみたい。」
ゆきちゃんも吹き出してしまいました。

「あっ、やっぱりタレントさんだあ。」

ミイ君はモモをすっかりタレントさんだと思ってしまったようです。


「いやまあまあ、おふたりさん、じつはね、モモは天使なのです。」

「天使!?」

二人は声をそろえて言いました。

「ペをつければペテンシよ。」

ミイ君は相変わらずおどけています。いつもこの調子でいじめっ子をやっつけているのです。


「うーむ、二人が信じないようですから、証拠を見せましょう。」

そういうと、モモは手にした星の杖を振りました。

たちまちベンチはももいろになってしまいました。


「わあ手品だあ!」

「やっぱり子どものマジックショーのタレントさんだ。」

モモはさすがに慌てました。

「ではこれではどうかな。」

今度はミイ君の着ているものがみんなももいろになってしまいました。

「きゃあー、なによこれ!」

「わあ、ミイ君ぼくとおんなじだあ。」

「ねえこれでみんなのところに一緒に行ってよ、そうしたらみんなからかわなくなるから。」

「そういう問題じゃないわよ!」

ミイ君心なしか女の子ぽくなりました。

『この二人難しいなあ、よしじゃあこれで。』

モモが星の杖をふると、モモはもとの姿になりました。


「あっほんとうだ!」

「羽のない天使だわ!」


「だから言ったでしょ、モモは天使だって。」

「ねえモモはなんで羽がないの?」

ゆきちゃんは不思議そうに聞きました。

「それはですね、私は生まれたばかりなのです。何か良いことをしないと羽がもらえないので

す。毎年クリスマスが期限なのです。今年で100回目なのです。今年失敗したら私は永久に羽がも

らえないのです。」


「100回目って、モモは100歳ってこと?」

ゆきちゃんにはまだモモが良く分かりません。

「へえ、意外とお爺さんなのね?」

「お爺さんではありません!」

「違うよミイ君、モモはおばあさんだよ、だって女の子だもの。」

「ええ?モモは男の子でしょ?」


「私、天使のモモは男の子でも女の子でもありません。

 それに天使の世界では1万歳とかざらにいるのです。ですからモモは生まれたてなのです。」


「天使は男の子でも女の子でもないの?」

「へええ、、、なんかミイとゆきちゃんみたいだ。」


『まあ、なんとか親密度が増したのでしょうか?』


「ねえ、モモ、もし今年羽がもらえなかったらずっと羽のない天使のままなの?」

ゆきちゃんは心配そうな顔をしました。

「いえ、天使ではなくなるのです。」

「ええ!死んじゃうの?!」

ミイ君は本気で心配になってしまいました。


モモはしばらく考えて、言いました。

「天使は死にはしませんが、死ぬようになるのです。」


「死ぬようになる?」
ゆきちゃんは不安な声を出しました。

「人間の子供として生まれるのです。」


!!!えええ!!!

「男の子?女の子?どちらに生まれても私たちお友達になるわよ。」

「それは、わかりません。どこの国で生まれるか、男の子になるか、女の子になるか分かりませ

ん。天使としては一生の不覚なのです。でもサタンになるよりはましですが。」


「ぼくはモモには天使になってほしい。」

「ミイもそう思う。ねえ、私たち何かしてあげられる?」

「いえ、私モモにもわかりません。モモは二人を慰めて喜ばせたかったのです。それが良いことになるかと思ったものですから。」


「大丈夫だよ、ぼくは他紙の叱ったよ。」

「そうミイも!」

「ありがとうございます。でも羽をもらえる時は鈴の音がなるのです。それがなったらモモは本

当の天使になれるのです。私モモはまだお二人を本当には喜ばせていなかったのです。」


三人は黙ってそこに座っていました。


「そうだわ!」

「ミイ君どうしたの。」

「モモはゆきちゃんを慰めようとしてぐうぜんももいろの服で出てきたのよ。だからゆきちゃんが大喜びしたらいいのよ。」

「大喜び?」

「ほら、モモがももいろにベンチを変えた時ゆきちゃんベソかくのやめたじゃない。」


「なるほど、わかりました。やってみます。二人とも私についてきてください!」

そういうとモモはミイ君とゆきちゃんを連れて空に飛んでいきました。」

「ついていくったって、ついていかなくても飛んでるよ!」

「うわー、かっこいい、スーパーマンになったみたいだ!」

「ではやってみます。高いところから見ててください。」

モモは星の杖をふりました。

三人がいた公園の木がももいろに、地面はももいろに、滑り台、ブランコもももいろになりました。

「うわ―本当にももいろだ!」

「ゆきちゃん楽しい?」

「うん。」

モモはもっともっと星の杖を振りました。

公園のある丘もももいろ、建物のももいろ、公園で遊んでいる小鳥たちもももいろ。

「わあ楽しい!」

「まだかな、鈴の音は、まだかしら?」


ももはまた星の杖を振ろうとしました。


あああ、モモは意識を失い、三人は空から落ちていきます。


「どうしたの墜落するよ!」

「モモどうしたの、目を開けて!」

三人はもといた場所に何とか着陸しました。モモはその場に倒れてしまいました。

「モモ!モモ!しっかりして!」

「モモ、十分楽しんだよ。目を開けて!」

モモは目を開けました。

「ごめんなさい。天使の魔法は一度に使いすぎると力を失うのです。

私は羽が早くほしくて欲張りすぎたのです。ごめんなさい、もう私には力が残っていません。

ゆきちゃん、ミイ君ありがとう。私は天使になれなかったけどあなたたちに会えてうれしかったよ。

きっと人間の子供になってどこかであなた方にまた会えたらいいなあ。

天使長にそれだけお願いしてみるよ。私はゆきちゃんを喜ばせなかった、、、。」

「いやだモモ!モモは羽がもらえなくても天使だよ!」

「そうよ、私たちのお友達になったじゃない。そうこれからも天使になってもなれなくても私たちお友達よ!」

「よおし、だったら私が。ほらゆきちゃんミイの腕を支えて。」


二人はそういうと、星の杖を手にとりました。

「行くわよ!」
「行くぞ!」

モモに代わって二人は星の杖を振りまわし始めました。

いったん元の色に戻った公園は再びももいろに、ベンチも木々も、草も、建物のもみんなももいろ。

ピンクちゃん白


「えーい、いっそのことみんなももいろにしてしまえ!」


そういうと街を歩いている人、みんな着ている服がももいろになりました。

いえいえ、そこらじゅうのものがみんなももいろに変化していきました。

お巡りさんもももいろ、タクシーもももいろ、学校の先生もももいろ、いじめっ子もももいろ、

パン屋さんのパンもももいろ、格闘技の道着もももいろ、ヤクザのメガネもももいろ

街路樹もももいろ、信号機もももいろ、道路もももいろ、戦隊もののヒーローもみんなももい

ろ、アイドルユニットもみんなももいろ、

川もももいろ、海もももいろ、空もももいろ、ゆうやけがもも焼け


「みんなももいろにしてやるぞ!」

ゆきちゃんが大きな声で叫びました。

「ゆきちゃん楽しい?」

「うん!」


『二人とも、、、私のために、、私はもう天使にはなれないのに。

天使長様、お願いがあります、二人はかってに天使の杖を使ってしまいました。でも二人は私のために何もわからずにしているのです。どうぞ許してあげてください。

私はもう羽のある天使にならなくても構いません。でも、もし人間として生まれてくるなら、どうぞの子の達のいる町の子供に生まれさせてください。』


[杖をふるのをやめなさい!もういいでしょう。]

大きな声がしました。

「だれ?」

「何なの今の声?」

目の前に白い衣を着た、天使が現れました。

「わっ本物の天使だ!」

「天使初めて見るわ!」


『私も天使なんだが、羽のない、、、?あっ!』


「天使長さま!」

モモはかすかな声を上げました。


[ももいろ天使、お前は天使でありながら欲を持ってしまった。だがこの二人はお前のために全力で杖を振り続けたのだよ。]

「すみません、天使長さま。二人を許してやってください。まだ子供なのですから。」

[いやいや、誰もあなたたち三人を責めていませんよ。確かにやりすぎてはいましたが、、ももいろ世界になってしまったのですから。]


「天使長さま、モモもゆきちゃんも悪くないんです。わたしミイが余計なことしちゃったんです。罰だったらミイにしてください!」

「いいえ、元はと言えばぼくが泣き虫だからです、ぼくが悪いんです。先生からもいつも泣き虫って怒られてたのに、、、。ぼくは悪い子です、ぼくに罰をください!」

天使長はにっこり微笑みました

[モモは天使になれなくてもいいから二人を許してあげてほしいと、そしてこの町の子供に生まれさせてくれと頼みました。

ミイ君はモモとゆきちゃんのために杖をふり続け、ゆきちゃんもモモのために、そしてふたりともそれぞれ、他の二人を許してくれるように、自分に罰を与えてくださいと頼みました。]


「はい、何でも罰を受けます!ぼくもう泣きません!」

「私も男女って呼ばれても構いません!」

天使長は思わず吹き出しそうになりました。


[三人とも耳をしましてごらん。]

遠くからリンリンと鈴の音

「鈴だ!」

「まさか、でも本当だ!」

「天使長さま、私は、、、」

[そうですよ、三人ともおのおの人のために行動したのですよ。ももいろ天使さん、あなたのやり方はとっぴでした。でもみんなをたすけたのですよ。そしてこの天使長でさえ楽しくなりましたよ。]


そう言い終えると、天使長はモモの手を取り、引き起こしました。

[ももいろ天使、さあ飛んでごらんなさい。]


いぶかるももいろ天使、ゆっくりと地面を離れ浮き上がって行きます。


「モモ羽だよ!」

「モモ!あなたは羽のある天使になったのよ!」


天使長とももいろ天使は二人の上を上がりながら手を振りました。

[今日の出来事はみな人々の記憶から消えています。あなた方には少しだけ記憶を残しておきましょうね。]


ゆきちゃんとミイ君は空に飛んでいくモモに手を振りました。

モモもふたりに手を振りました。

鈴の音はいつしかジングルベルに変わりました。

「モモ、クリスマスに間に合ったね。」

「明日、ももいろのセーターミイも着ていくね。」


空にはほんのりももいろの夕焼けです。



それから二十年後、一人の赤ん坊が生まれました。

天使のようにかわいい子でした。

名前をモモと名付けました。

ミイ君とゆきちゃんの子供です。

男の子か女の子かって?

さあ、それは二人に聞いてくださいね。


ピンクちゃんにっこり


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普段の僕は、下の言葉遊び、、、早く言えばダジャレ、が生き甲斐?かもしれません。

言葉遊びと絵本(大人向けかなあ)、を出しました

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