雨が降るのか降らないのかうんざりの気持をもてあまして、映画を観に行った。
「九十歳。何がめでたい」:監督 前田哲(2021年に公開され大ヒットとなった『老後の資金がありません』の監督)
劇場:109シネマズ湘南
草笛光子生誕90周年記念映画」(オープニングで流れた)
映画 「九十歳。何がめでたい」の賑やかなネット広告
わたしは、2024.6.21のロードショーで早々と観た。
109シネマズ湘南にて。
1. 映画のはじまり
数々の文学賞を受賞してきた90歳の作家佐藤愛子(草笛)は、断筆宣言して来客もなくなり鬱々と過ごしていた。一方に、冴えない中年の編集者・吉川真也(唐沢寿明)がいる。ある日、吉川の所属する編集部では愛子の連載エッセイ企画が持ち上がり、吉川が愛子を口説き落として、晴れて担当編集に!
そして吉川は「先生のお言葉こそ必ず読者に響く!」と、毎回愛子好みの和菓子持参で連載の依頼を持ち込む。愛子は頑なに拒否。「私の書いた何を読んでそう思ったの?」と意地悪な質問で応戦。「書けない、書かない、書きたくない!」と断固拒否する愛子と、なんとしても企画を成功させたい吉川との”頑固者”同士の攻防が展開される。
2. エッセイの連載が意外な大反響に
エッセイの依頼を持ち込まれた愛子がヤケクソ(本人の言葉)で始めた連載は「いちいちうるせえ!」と世の中への怒りを赤裸々に書いたエッセイだった。それが意外に大反響を呼ぶ。
「書けない、書かない、書きたくない!」と断固拒否する愛子と、なんとしても企画を成功させたい吉川との”頑固者”同士の攻防(お互いに断筆/甦り筆を賭けての瀬戸際)。
これがこの映画の表(メイン)の柱。一方で、編集者・吉川は、家庭(妻と娘との関係)が崩壊状態で、離婚届にサイン・押印を突きつけられている。これはこの映画の二つ目の裏の柱。この表、裏の柱があることで、観客は、この映画の深みを実感する(仕事と家庭の重層感)。
佐藤愛子「九十歳。何がめでたい」
単行本 2016年8月1日 小学館発行
愛子曰く「ヤケクソが籠っています」。
2016年5月まで1年に渡って『女性セブン』に
連載された大人気エッセイに加筆修正を加えたもの
3. 豪華キャストも話題に
映画の豪華ゲスト出演者も話題になった。
わたしは、はじめ、佐藤愛子役は草笛光子と聞いたとき、キャラや容姿が合っていないのではないかと思ったが、映画を観て、あまりにはまっているので驚き、感心しきりだった。この女優の演技力と存在感を見直した。
草笛と親交のあるオダギリジョー、清水ミチコ、LiLiCo、石田ひかり、三谷幸喜の出演も適役だった。ゲストキャラクターの三谷幸喜は、タクシー運転手の役だったが、セリフまわしのうまさはさすがだった。その個性がとても印象に残った。
●中年編集者吉川真也役の唐沢寿明は演技がうまいのに感心した(なかなかの俳優と思った)。佐藤愛子に新らしい分野での連載エッセイを書かせることに成功したが、家庭(妻と娘との関係)の崩壊は防げたのか、これはネタバレになるので書かないことにする。でも深みのある全体ストーリーになっていると感動した。
佐藤愛子著 単行本「役に立たない人生相談」
2016年8月1日 小学館発行
人生の波瀾万丈を乗り越えてきた92歳の現役作家が、
若者から中高年まであらゆる世代の悩みに答える。
愉快痛快な人生問答集!
それにしても、この歳でこの元気なお顔はどうして?!