「悲しい経験をしたみんなに、空を見上げてほしい」。そんな思いで参加した東日本大震災の被災地を巡る旅。難病の筋ジストロフィーと向き合う車いすのイラストレーター河津実幸(まみ)さん(26)=大分県日田市大山町=は、震災直後から被災地支援を続ける日本緊急援助隊チーム大分=日田市=のメンバーと一緒に5月18~20日、宮城県石巻市を訪れた。
海岸沿いに残るがれきの山、基礎がむき出しで雑草の生い茂る住宅跡地、焼け焦げた門脇小学校、あちらこちらに供えられた花…。2年以上がたっても、震災の傷跡は生々しく残っていた。
2011年3月11日以降、自作のカレンダーを門脇小学校に送り、子どもたちを元気づける活動をしてきた実幸さん。焼けて廃墟となった校舎を目の前にして、「うわー、すごいね」と絶句。車いすのテーブルにデジタルカメラを置き、わずかに動く手でシャッターを切った。その日の日記には「門の脇小学校の焼けた建物を見て悲しかったです。>_<;津波がたくさんの人をのみこんだことを聞きました。すごい残酷でした」とつづった。
その日の夜、チーム大分が支援活動を通じて知り合った被災者家族との懇親会があり、実幸さんは自作の歌「空」を歌った。どうしてもあの場所で歌いたかった歌だ。「空」は、同じ筋ジストロフィーを患う初恋相手を思って書いたラブソング。実幸さんより先に空に昇ってしまった彼と、空を見上げて毎日心の中でお話をするときの気持ちを表現した。
旅行前、「友達が亡くなったりして悲しくても、空を見たらいつも近くに感じられるよっていうことが伝わればいいな」と話していた実幸さん。涙を見せることなく、一言一言をしっかりと歌い上げた。
帰り際、一人の若い母親が目頭を押さえながら実幸さんと握手をし、「私も大切な人が空に行ってしまって…、でも、私も空を見てお話をしますね。本当にありがとうございました」と話してくれた。「よかった。どうもありがとうございます」と実幸さん。心がつながった瞬間だった。
実幸さんの病気は筋力が年々衰える進行性の難病。呼吸を維持するため、喉を切開して呼吸器を取り付ければ、もう声は出なくなる。「もし、私が死んだら、おんなじ病気で苦しんでいる子に『実幸っていう女の子がいたんだよ。だからあなたも頑張ってね』って伝えてほしい。私が生きていた証を残してほしい」。実幸さんは、そういう風にして、今を受け入れている。
「1歳まで生きられるかわからない」と医師に宣告されてから四半世紀。26歳の今、実幸さんは、歌えなくなったとしても、みんなが自分のかわりに歌い続けてくれることを願っている。
(記者・刀根徹朗=実幸の今の彼氏)
空
作詞 河津実幸 作曲 蒲池志麻
1.
かぜをかんじて きょうも そとへでかけよう
あなたがいるから そとへでかけよう
ひとりきりだと すこし こころぼそいけど
そらが わたしに メッセージ くれる
きょうは ハート わたしに ラブコール
だけど わたし まだ そこへは いけないよ
だって わたし たくさん すること あるからね
*そらをみよう そらをみよう
あなたと はなせる そらだから
そらをみよう そらをみよう
きょうも がんばるから
2.
あめをかんじて きょうも そとへでかけよう
あなたがいるから そとへでかけよう
そらのあなたが なみだ こぼしているなーらー
きょうは わたしが メッセージ あげる
そらにとどけ わたしのラブソング
あなたが いま ないていーるなら
あなたのため やさしく いっしょに うたーうからね
そらをみよう そらをみよう
あなたとうたえる そらだから
そらをみよう そらをみよう
きょうも がんばるから
*くりかえし
そらをみよう そらをみよう
そらをみよう
きょうも がんばるから
※写真は、帰りの飛行機から見た景色。空を泳ぐ飛行機の翼には、真っ赤なハートマークがあった。
http://www.coara.or.jp/~mamimami/cd2-kasi.htm
