玄関の呼び鈴が鳴ったときそのドアの先にいる人物は限られている。


ちょっと掘れば腐るほど類似品が転がり出てくるような
大学生を訪問してくる物好きなど数パターンしかないものだ。

まさか生き別れの兄弟が衝撃の告白とともに現れるわけでもなければ

某国のエージェントが自分を消しにかかってくるわけでもない。


熱烈なファンが黄色い声とともに待ち構えているのならば悪い気はしないが。


ひとつは宅配。うちの場合指定しないと大抵午前に来るので
休日等ではこのチャイムで起きることもしばしば。

完全に「今の今まで寝てました」スタイルで玄関に飛び出すので
いつもくる佐川のオヤジになんと思われているのか。
少々具合いが悪いが相手がオヤジであるというのがせめてもの救いである。


日の沈んだころならば例えば男友達のアポなし訪問だったりする。
それはいっこうに歓迎である。部屋さえ綺麗な状態であれば。


最後は一番ありがちでやっかいな、だれそれなにがしの勧誘。
勧誘物は宗教か新聞のほぼ二択。


それにしてもこの手の仕事は他人事ながら随分と難儀なものであると感じられる。

実際にやったことがないのにそのように思われるのだから

一体当人はどのような気持ちで「玄関先の嫌われ者」を
自ら演じているのであろうか。


万に一の確率。人海戦術と草の根運動の至り。

「イエスキリストは受難が・・・」

自分にとってはあなたの訪問が受難そのものである。


「カエレ!」の怒号とともに一蹴しドアを封じることは
やろうと思えばできるもののなんだか可哀そうでできない。


むしろ勧誘云々は置いておいて、我が玄関先を除く普段はどんな人物なのか
興味が沸くほどだ。もっとも「お話ししましょう」なんて言ってしまったが最後、
個室に連れて行かれて黒装束十数人に囲まれて退路を絶たれ、
二度と我が家のしきいを跨ぐことははできないであろうが。