自民党の改憲草案には「法律と同一の効力を持つ政令」の制定が可能とされている。国会による立法により、その範囲で行政が行われる原則がなくなり、国を相手に訴訟を起こしても、国民の基本的人権が優先される余地はなくなる。

面白い話がある。「GHQに押し付けられた」と言われることの多い日本国憲法だが、憲法制定の際には、GHQから「緊急事態条項」を盛り込む提案があったそうだ。これを日本側は拒否している。憲法制定議会で金森徳次郎・憲法担当大臣は「緊急勅令及び財政上の緊急処分は、行政当局者にとりましては実に重宝なものであります。しかしながら重宝という裏面におきましては、国民の意思をある期間有力に無視しうる制度であるということがいえるのであります。」「過去何十年の日本の、この立憲政治の経験に徴しまして、間髪を待てないというほどの急務はないのでありまして、そういう場合は何らかの臨機応変の措置をとることができます」と述べている。

昨年成立した安法法制(戦争法制)と今後狙われている「緊急事態条項」を憲法に加えることで、日本の法体系は立憲民主制から完全に離脱する可能性が大きい。これら有事法制が一たび発動されると、憲法の民主的諸原理は一時的に停止もしくは棚上げされることになるが、それらを元どおりに復元することはおそらく絶望的に難しいだろう。さらにkの種の制度は、現実の発動に至らない段階でも、非常態勢の準備そのものによって、憲法秩序に相当の変質を生ずることに注意すべきである。

そして、すでにこの国には秘密保護法が制定されており、マスコミは萎縮している。有事法制の完成によって真実が国民に知らされることはなくなり、選挙で代表を選ぶ材料が奪われる。とりわけ、軍の不正などに切り込むマスコミは皆無になり、内部告発も激減する。自衛隊や米軍に関するニュースは今でも少ないが、ますます聖域化されるていくだろう。