テレビや新聞などメディアで見た人でも
この人すごいなあ、と思えば会いに行く事はよくあります。

今、一番会いたいなあと思うのは小山秀之進さん。

残念ながら亡くなっているのでお会いすることはかないませんが。

天草出身の大工棟梁です。

長崎の大浦天主堂を作った人です。

日本に二つしかない国宝の洋風建築のうちの一つです。

彼は、他にもグラバー邸やリンガー邸も手がけています。

創建時の大浦天主堂

先日、テレビで放映された「美の巨人たち」で初めて彼のことを
知りました。

大浦天主堂が建築されたのは1865年で約150年前の江戸時代です。

当然、洋風建築は日本にはありませんでした。

フューレ神父とプティジャン神父が設計をしました。

ヨーロッパでは石で作られていたゴシック建築をケヤキを使って
木造で作ったのが小山秀之進でした。

設計図を元に施工を説明した二人の神父も
大変だったと思いますが
見たこともないものを作り上げた棟梁小山の心意気に感動します。

一番驚いたのは、このコウモリ天井とも呼ばれる
リブ・ヴォールド天井です。

大浦天主堂　内部

この複雑な曲線を作り上げた技術には竹が使われていました。
竹で作った下地に土を塗り、漆喰で仕上げています。

日本古来からの伝統が生かされています。

建築用語ではよくアールと言われる曲線の仕事。

非常に難しいし工夫が必要です。

私が、このアールの仕事に最初に出会ったのは
山ぐらしをしていた20代前半でした。

家の横の側溝をレンガで作っていました。

そこに小さな梨の木があったので
そこを避けて溝を作る必要がありました。

師匠は直線で避けるのではなくて半円のアールで
梨の木を避けたほうがかっこいいのでそうするように
私に指示しました。

半円にレンガを並べるなんてどうすればいいんだろう？

そう思った時に、師匠は薄い板を持って来ました。

それを半円形に曲げて形を作ったのです。

その板にそってレンガを並べればきれいな半円形になりました。

こんなに簡単にきれいな曲線を作ることができるんだ！

と感動したのを思い出しました。

小山は自在に曲がる竹を使って美しい曲線の下地を作ったのです。

設計した神父たちと棟梁の小山。

毎日のように議論をしてお互いの理想をぶつけあい
どうすれば実現できるか知恵を絞っていたんだろうなあと思うと
その現場を見てみたかったなあと思います。

私たちトレーダーは常に複雑な動きをしているように思われる
チャートと毎日向き合っています。

しかし、必ず法則はありますし
その裏には多くの人の思いがあります。

どちらも大変かもしれませんが
大浦天主堂を作るよりはチャートの動きを読み解くほうが
もしかしたら簡単かもしれません。

比べれられるものではありませんが、職人トレーダーとしては
未知のものを作り上げる心意気だけはいつも持っていたい
と思っています。

職人の心意気