第三部~危機~
どのくらい時間がたったか…
変な気配でセンチクは目を覚ました…
さっきまでと全然違う…
何かいる…
ここには自分とコルナ以外に何かいる…
センチクはコルナを起こした
コルナはわけがわからないまま立ち上がり
あたりを見回して必死に何が起きた理解しようとしていた…
何かはわからない
わからないけど…
でも、何か…何か…
何かが来る!!
ロココロ
2012年03月29日 04:38
注意深くあたりを見回してたセンチクにコルナが言った
『センチク…あれ…』
コルナの声と手にセンチクは振り返り愕然とした…
森の奥から光る目が見える…
ゆっくりとその目は近づき、姿を現した!
『熊だ!!』
今まで見たこともない大きな熊がこちらを見て立っている
『走れセンチク!!!』
体が動かない…
震えるセンチクを無理矢理引っ張って走るコルナ!
熊はすごいスピードで追ってくる!!
『早くあの木に登って!できるだけ高い所に!』
センチクはコルナの言われたようにするのに必死だった
木を登ろうにも足が震えて力が入らない…
怖い!助けて!!!
下からコルナが押し上げてくれてやっと登れた、その時にセンチクは気がついた…
『どうしよう!ピースを入れたポーチがない!』
慌てて辺りを見るとコルナの向こうにポーチが落ちている!
どうしよう!熊がそこまできてるのに!!
センチクの視線に気がついたコルナは
『そこで待ってて』
そう言って登りかけた木から飛び降りた。
センチクは何が起きたかわからなかった
『コルナ?!』
コルナは熊のいる方へポーチを取りに走った!
『やめて!コルナ!戻って!!』
センチクは必死に叫んだ!何度も何度も…
でもコルナは止まらない、どんどんセンチクから離れていく
『お願い!コルナ!戻ってー!!』
コルナはそのまま走ってゆく…!
熊もこっちへ向かってくる…!
どうしよう!聞こえていないんだ!
…いや、きっと聞こえていても
危険だとわかっていても取りにいってくれたんだ…
コルナと熊の距離がどんどん近くなる!
コルナが危ない!!どうすれば…
必死でポーチにたどり着き
ポーチをしっかりとつかんだコルナを大きな影が覆った…
さっきよりも大きく、そして強く見えた…
『コルナ早くこっちへ!!』
センチクは叫んだ
でもコルナにはそんな力は残ってなかった
ポーチをとろうと木から飛び降りた時、右足を傷めていた…
傷めた右足は目の前の巨大な影にガクガクと震え
とても逃げる事はできなかった
コルナは二人で集めたピースが入ったポーチを胸にギュっと抱え
守るようにうずくまった。
熊は、二本足で立ち大きく鳴きながら前足を振り上げ
その勢いで倒れこむようにコルナめがけて
振り下ろした!!
『!!!!!!』
………
ピィィィィィィィィィィー……
ピィィィィィィィィー……
……………
綺麗な高い音が青空を抜けるように響き渡った
この音は…草笛…?
コルナはゆっくりと目をあけた…
無傷な自分に驚きながら顔を上げると熊は逃げるように森に帰って行き
木の上から必死に草笛を吹くセンチクが見えた。
コルナはセンチクに駆け寄りニッコリ笑って言った
『笛、吹けるようになったね』
センチクは少し恥ずかしそうに言った
『君のおかげだよ』
コルナの足は大きく腫れ上がっていた…
小川の水で布を冷やしてあてても
痛みは消えず、コルナはつらそうだった。
『コルナごめんね…ボクがポーチを忘れたからこんな事に…』
センチクはどうしていいかわからりませんでした
わかるのは自分のせいでこんな事になってしまったという事…
罪悪感でいっぱいで涙が止まりません。
その反面、コルナは全く怒っていませんでした
『泣かないでよセンチク、ボクは怒ってないし
悲しんでもないよ、嬉しいんだ』
センチクは驚きました
涙で真っ赤になった目でコルナを不思議そうな顔して見つめました。
『ボクはセンチクと一緒に集めたこのピースを守りたかった
そして君はそんなボクを守ってくれたんだ
ありがとう!ぼくはとっても嬉しかったんだ!だから気にしないで!』
『ありがとう…コルナ』
センチクはコルナが大好きになっていました
そして、そのコルナと一緒に旅ができる今を心から幸せだと思えたのです。
でも問題はコルナの足です…
木の枝で固定してもコルナは歩けそうにありません
険しい山道を下るのは到底無理です
自分を置いて先に進んでほしいとコルナは言いましたが
センチクは聞きませんでした。
そんな時…ザッ、ザッ…足音と一緒に後ろから声がしました
『あんた達、こんな所でなにしてるの?』
突然の声に驚いて振り返ると、そこには茶色い髪を一つにまとめ
狼の毛皮の腰巻とブーツを身につけ
弓と矢を肩からかけて、まだ少し小さい馬に乗った女の子がいました
『君は?』
少し警戒しながらセンチクが聞きました
『私の名前はローズ、この山を下った所にある村に住んでるの
これからウサギを狩に山に入ろうとしてたんだけど…
足…どうしたの?怪我してるみたいだけど…』
センチクとコルナは事情を話し困っている事を伝えました
ローズは家に帰れば応急処置はできるから一緒に行こうと提案しました
ただ、かなり酷いから治療をしても直ぐ旅に出ることは無理だと言いました
仕方なく、コルナはローズの家に…そしてセンチクは先に進む事にしました。
『ごめんねセンチク…せっかく一緒に旅をしてたのに…
足が治ったら必ず後を追うから!』
そう言ってセンチクの手をギュっと握りました。
ローズの馬にコルナをのせてローズは山を下り、センチクはまた一人になりました。
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