焼き物の色は、釉薬の中に含まれる金属の酸化物によりきまります。
ガラスの色と同じであると考えて良いのです。現在、地球には元素の数は106種あります。その中で物質を構成する元素は50種程度です。焼き物のなかで関係する元素を分類すると、①常に発色する元素、②特定の条件のもとに発色する元素③どのような場合でも発色しない元素に分けられます。
①の常に発色する元素には鉄、コバルト、マンガン、銅、ニッケル、クロム、 ウランなどの主で重金属が多くあります。
②のある特定の条件のもとに発色する元素にはチタン、バナジウム、モリブデン、ヒ素、タングステンなどがあります。③のどのような場合にも発色しない元素にはケイ素、アルミニュム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウム、リチウムなどで透明か白色になります。
現在の科学技術は、金属や金属の酸化物を高純度に作り出すことが出来ます。江戸時代の陶工はどの様にして発色する金属や金属酸化物を手にいれてたのでしょうか。
窯元の釉薬の技法は秘密が堅く守られ、「一子相伝」で伝授されたました。
窯元は常に色のついた崖の岩肌に注目し、鉱山から産出する鉱物を手に入れ、砕いて釉薬に混ぜて試し焼き繰り返し焼き物の色を作りだしました。
鉄サビが入った釉薬は、千差万別の色を出します。柿右衛門赤になったり、相馬焼の黄緑や、黄瀬戸になります。鉄サビの入った飴釉は会津本郷焼のニシン鉢の色になります。鉄釉の濃度を薄めて還元炎て焼くと、青磁となり大堀相馬焼の色になります。鉄黒色は鉄釉の鉄サビの濃度を濃くしたもので鉄黒、引き出し黒と呼ばれます。
鉱石に含まれる酸化コバルトを使うと、濁った青色になり、呉須と呼ばれます。色鮮やかなコバルト青は明治時代にドイツから輸入されたものでドイツコバルトとよばれます。
酸化マンガンは飴色、黄茶、紫褐、紫になります。酸化銅(緑青)を含む釉薬を還元炎て焼くと赤となり、辰砂の赤色、牛血紅と呼ばれ珍重されます。また、酸化炎て焼くと緑色のなり、織部の緑色なります。トルコ青は銅の釉薬です。酸化ニッケルは、黄色、、オリーブ色、ヒワ色、赤色となります。酸化クロムは、レモン黄色、、ヒワ色、緑色に発色します。放射性物質の酸化ウランは黄色に発色します。
このように釉薬の調合と焼成の状態により同じ元素でも異なった色を示すのです。
また、曜変天目茶碗に代表される釉薬は結晶釉と呼びます。結晶釉とは肉眼で確認出来る大きさの結晶が器の表面に出来る釉薬の事です。
焼き物の魅力の一つに器や壺の色合いの違いによる「景色」の面白さにあるのではないのでしょうか。