機能美と陶器

使い易いは美しいという美の考えかたを「機能美」と呼びます。

大正時代に民芸運動の提唱者、柳宗悦はこう述べています。「工芸の美とは無名の陶工・職人たちによって無心で作られたもの、普通の生活の中で役立つものでなければならない。暮らしの中の道具でなければならない。これは民衆の工芸、民芸である。」民芸運動は柳宗悦・河井寛次郎・浜田庄司等により提唱された文化運動であす。

それは長い伝統の中で工夫と改良を重ねた結果、高度の技術の結晶として、機能美が生まれ、使い易くてあくまでも用途を誠実に追及した健全なものでなければなりません。その美は用途の美であり、人の心を捕らえ引きつけるであす。

柳宗悦達は福島県の窯を訪ね民芸の素晴らしさを提唱し指導しました。

会津本郷焼の宗像窯に柳宗悦らが訪れています。焼き物の見方として「一土二焼三作」と云われております。土を選び、焼き具合を調整し、作品の造形を工夫します。

焼き上がりは釉薬の使い方により、いろいろな色調の焼き物になります。

私は銅釉をよく使いますが、これは金属銅のサビの成分である緑青を釉薬の中に4%程混ぜ合わせたものです。この釉薬の使い方は、窯の温度が950度になった時、窯の煙突の引きを弱くすると、窯の中の燃えが悪くなります。窯の中の状態が一酸化炭素の多い状態になります。この不完全燃焼の炎の状態を還元炎と呼ぶます。
この方法で焼くと、金属銅のサビ釉は紅色の目の覚めるような衣をつけた肌合いとなります。

 

 


◎筆者近景写真と昭和50年初期の作品

窯の煙突の引き具合を良くし、燃焼度合いを高くすると完全燃焼の酸化炎の状態になります。この状態の炎で焼くと銅のサビ釉は緑色となるのです。
こうした変化は、炎の強弱が釉薬の成分である銅の原子の並び方を決めることから起こる現象です。
偶然にも器の表面が酸化炎、裏が還元炎になることがあります。銅のサビ釉の場合は、表が緑、裏が紅色になり、その色の変化が楽しめます。

このような窯出しはめったになく、色鮮やかな焼き上がりを見ると、疲れも吹き飛び充実した気持ちになります。内炎(還元炎)、外炎(酸化炎)の使い方がうまくゆかないと窯酔いが起こり、冴えない色調になってしまいます。窯焚きの難しさは、温度が950度になつた時からが大切で一時も窯から目を離せません。器が美しい肌合いに焼き上がるのを念じながら、時の過ぎるのを忘れ、憑かれたように窯焚きを続けます。

      ◎著者作「銅釉窯変壺」高さ42センチ・横28センチ横