8/5 (22:47頃)
*****【 報ステ 】*****
オバマ大統領が広島訪問の際に核の先制不使用を打ち出さなかった背景についての特集
「米「核で先制攻撃せず」検討 ”抑止力低下”・・・反発する日本」」とのタイトル
(ナレーション)
「(中国と戦略対話を行うという考えがオバマ政権内にあるとする共同通信太田昌克編集委員へのインタビューののち)ただ、一方で核の抑止力の低下を懸念する声も強く、広島での宣言は見送られたと言います。」
(政府高官の匿名発言)
「日本の安全保障からして「核の先制不使用」はありえないでしょう」「言葉の使い方に注意して欲しいという懸念を伝えた」
(外務省幹部の匿名発言)
「核の先制不使用なんてそもそも全くナンセンス」「宣言することなんてないですよ。絶対に。日米安保が成り立たなくなる」
(ナレーション)
「日本政府は、北朝鮮や中国への抑止力が低下することを懸念。オバマ大統領の意図を確認するため協議を申し入れたと言います」
(共同通信太田昌克編集委員のインタビュー)
「被爆国の政府(日本政府)が結果的に「核なき世界」を広島で改めて誓ったオバマ大統領の政策をつぶす、そういった残念な結末になりかねない」
「(米の宣言見送りで中国が核の先制不使用を見直すことになれば)それは日本の安全保障にとって極めて重大な帰結をもたらすわけですから、先制不使用のプラス効果もきちんと議論する必要がある」
*****【 論評 】*****
共同通信の太田昌克編集委員の解説は非論理的で、番組の編集も偏っている。
まず、太田編集委員は、日本政府の協議の申し入れがオバマ大統領の政策をつぶす可能性について言及しているが、日本政府の影響力を過大視するにも余りある。そう判断する根拠が理解できない。
オバマ政権が核の先制不使用宣言を見送ったのは、アメリカ国内で反対論が多かったというのが常識的かつ支配的な見方だ。なぜその事実を報じないのか?
さらに言えば、外交というのは、互いのコマを一つずつ使って行う戦略的関係の上に成り立っている以上、核の先制不使用宣言を一方的に打ち出すことは常識的にあり得ず、中国などからそれに見合った緊張緩和策を得られなかったことが大きいのではないか?
すなわち、南シナ海で、国際社会からの反対を押し切って埋め立て基地増設を強行し、実効支配を強める中国こそが、オバマ政権の核の先制不使用を見送らせた原因だと私は思うが、違うのか?
また、本番組では報じていないが、アメリカが核の先制不使用に打ち出せない最大の理由は、生物・化学兵器の問題がある。
核だけ先制不使用を宣言したとしても、核兵器と同じく無差別大量殺戮が可能な生物・化学兵器が存在すれば、生物・化学兵器を有しない国が核の先制不使用を宣言した瞬間に、パワーゲームは一気に生物・化学兵器を開発している、或いは密かに開発している国に有利になる。
大田編集委員はアメリカの核の先制不使用が恰も日本の安全保障に資するか如き解説しているが、化学兵器禁止条約に署名していない北朝鮮と対峙する日本政府としては慎重に行動しなければならないのは当然であるし、そうした事実を伝えないのは不公正かつ不誠実だ。
日本ではなく、北朝鮮や中国の安全保障を慮っているのではとの疑念が生じた報道だった。
(8/7執筆)