世の中では一番の友があなたを裏切り敵となることがあります。

一生懸命育てた自分の息子や娘さえその恩を忘れ、親不孝者となることがあります。

自分の幸せと名声をかけて信じていた人にその信頼を裏切られることもあります。

富は、自分が一番必要とするときに、そこにあるとは限りません。

名声はほんの一瞬の過ちの為に簡単に失われてしまうし、成功している時は敬ってくれている人たちも、失敗の影が訪れるとともに突然、石を投げつけてきます。

しかし、こんな自分勝手な世の中において絶対に変わることなくあなたを見つめ続け、決して裏切らず、恩を忘れない誠実な友。それは、あなたの犬なのです。

あなたの犬は、富める時も貧しき時も病める時も健やかなる時も、いつもあなたに寄り添っています。

冷たい風が吹きすさび、雪が降りしきる日でも、あなたが隣にいさえすれば、冷たい土の上で眠ります。

与える食べ物が何一つない手を差し伸べても、その手に接吻し、世間の荒波に揉まれて傷ついたあなたの心と体を優しく舐めます。

貧しいあなたの眠りを、まるで王子の護衛のように守り、全ても友があなたを見捨てたとしてもそこに残ります。

富や名声を全て失ってtも、日が沈みまた昇るのと同じように変わることなくあなたを愛しています。

たとえ運命によって全ての友をなくし道端に住むことになっても、忠実なあなたの犬は隣にいてあなたを守ること以外何も望まないでしょう。

そして全てが終わり、死がやっって来て、

あなたが冷たい土の中に葬られ全ての人が去った後も

あなたの犬は、前足の間に頭を埋めそこにとどまり

悲しみにくれた目を大きく見開いて墓を守り、

自らが死を迎えるまであなたに忠実であり続けるのです。

 

    ジョージ・ヴェスト上院議員1870年

ディーン・R・クーンツ『ウォッチャーズ』(下)より