BORDER ⑱ | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



待ち合わせ場所は智が指定した。

会いたいと、ただそれだけを伝えるメッセージ。

智も会いたいと……そう思った。

二宮に、あの場所を見せてあげたい。

小説の、あのシーンにピッタリのあの場所……。

鳥居に続く階段をゆっくり上る。

会えばわかるのだろうか?

自分が本当に欲しているもの。

それが何なのか……。

二宮なのか、二宮の小説なのか。

はたまた全然違う別のものなのか。

智は目を凝らして境内を見回す。

神社にまだ二宮は着いていない。

空に雲が増えている。

ひと雨、来るかもしれない。

拝殿の前の階段に腰を下ろし、二宮が来るのを待つ。

ドクッと心臓の音が大きくなっていく。

初めて会った時とは違う緊張感。

コメントやメッセで何度もやりとりした。

あの時よりもさらに二宮を知っている。

なのに、この緊張感はなんだろう?

鳥居の向こうに人影がチラつく。

「……来た。」

智は立ち上がると、自分の尻をパンパン叩く。

二宮が目の前で立ち止まる。

その顔は強張り、思いつめているように見える。

何か……あったのか?

「話って……?」

智が切り出すと、二宮はポケットに手を突っ込んだまま、智を見つめる。

雲が流れる。

太陽が遮られ、暗くなる境内。

ここにいるのは智と二宮、二人だけだ。

今日は社務所も閉まっている。

二宮は一度視線を下げ、何かを考えるように黙り込む。

智はじっと二宮の言葉を待つ。

鳥の鳴き声と風の音が、二人を包む。

何とも言えない時間が流れ、暫くして二宮が顔を上げる。

意を決したように強い視線で智を見つめる。

「文句を言いに来たの。」

「文句……?俺に?」

「そう。」

智は考えを巡らせる。

二宮が小説を書き、それを読む自分。

ただそれだけの関係。

文句など、言われるようなことは何一つない。

コメントに、何か二宮が嫌がるようなことを書いてしまったのだろうか。

いや……二宮は喜んでいてくれていたはずだ。

コメントの返信も、いつでも喜んでいるように見えた。

智は足元の小石を睨み、つま先で小さく蹴る。

「大野さん。いや、FischerManには感謝してるよ。ここまで小説を盛り上げてくれて。」

だったら……。

智は顔を上げ、二宮を見る。

白い二宮の顔は、歪んだ笑顔を浮かべている。

まるで泣き出す前みたいだ……。

「コメントもそう。アナタの言葉に俺だけじゃない。

みんなも影響受けてたし、想像以上に素晴らしいモノになってると思う。」

えっ、それは……。

言い掛けて視線を外される。

他の読者が影響を受けていた?

俺のコメントの?

智は最近のコメントの付き方を思い起こす。

なかなか付かないコメント。

智がコメントを入れると、待っていたようにコメントがなだれ込む……。

あれは……偶然ではなく、俺のせい……?

「そんなつもりは全然なくて……その……。」

智に話す隙を与えず、二宮が続ける。

「いいよ。感謝してる。」

「いや、俺のせいで悩んで……。」

二宮が下唇を噛む。

言い訳など聞きたくない。

そう言ってるようで、智も黙るしかなかった。

湿った匂いがして、そっと空を見ると、厚い雲が空を覆い尽くしている。

ポツっと、智の肩に雨粒が落ちる。

ポツポツッ。

すぐに雨脚は早くなり、頭に、腕に、雨粒が当たる。

智の手が、二宮の肩にかかる。

「コメント、迷惑だったらやめる。」

なんとかそれだけ言って、うつむき加減で二宮を見る。

二宮は、智と視線を合わせてはくれない。

二宮を困らせたいわけじゃない。

ただ……。

「ほんと、迷惑だったらやめる……。」

「俺が書いてんのかわかんないんだよ、もう!」

ザァーっと大きな音を立てて雨が降り出す。

二宮の悲痛な叫びが、雨に掻き消される。

「どんどん引っ張られる。違う方に向かう。けど、みんなはそれを望む。

 ……ね、大野さん。俺はこれからどうすればいい?」

泣いてる……?

泣かせてる?

俺が……?

智の手が二宮の頬を包む。

見上げる二宮の顔を、容赦なく雨が打ち付ける。

痛そうで、智の指が二宮の頬を撫でる。

「あれは……二宮さんの小説だ。」

「……そう…だよ。俺の小説……。」

雨なのか涙なのか。

二宮の頬を伝うそれが冷たそうで……。

弱そうで、頼りなさげで、この雨から、世界から、二宮を守ってあげたいと思った。

智の唇が、二宮のそれと重なる。

柔らかく包んで、落ち着かせるように、ゆっくりと舌を動かす。

驚いて目を見開いたままの二宮も、徐々に智の舌の動きに合わせて絡まり出す。

雨が激しくなる。

智は二宮の眼鏡をはずし、雨の伝う前髪を撫でつける。

「大野さ…んっ。」

ああ……。

境だ……。

俺が欲しいのは……。

もう一度唇を合わせ、小さな二宮を抱きしめた。