Believe -12- | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



ガンディア公は噂通りの貴公子だった。

あいつよりもさらに淡い髪の色。

すっきりとした顔立ち。

笑うと頬に刻まれる皺が、優しそうな印象を与える。

あいつよりも背が高くて、長い足が絡まりそうにも見える。

「君がショウ君?初めまして。」

ガンディア公が手を差し出す。

僕はおずおずとその手を取る。

「兄から聞いているよ。とってもいい子だって。」

にっこり笑う顔は、汚い物なんか見たこともないって顔で……。

でも、その瞳は、あいつと同じ色で……。

同じ兄弟でこうも違うものなのか?

父親には隠している僕のことを、ガンディア公には話している。

そのこともなぜか面白くない。

あいつが、ガンディア公に笑いかける。

柔らかく微笑む顔は、他の誰にも見せたことのない顔。

ガンディア公にだけ見せる顔。

僕にも……見せたことのない顔。

「マサキ、こっちでゆっくりするといい。ショウがピアノを弾くから。」

「へぇ、ショウ君、ピアノ弾けるんだ。」

ガンディア公があいつの隣に座る。

あいつは包み込むような素振りで、ガンディア公の背もたれに腕を伸ばす。

「チェンバロの音より、私はこっちの方が好きでね。」

「うん。僕も。」

ガンディア公は、甘えたような表情であいつを見つめる。

二人並んで足を組み、談笑する姿は、いかにも煌びやかで……。

いつものあいつじゃない。

知ってたけど知らない、別世界の人間……。

僕はピアノの前に座って、鍵盤に手を掛ける。

ゆっくりと指に力を入れる。

ポォーーン。

最初の音を聞くと……。

一気に気持ちが溢れ出す。

自分でもわからない、気持ちの昂り。

憎しみ、切なさ、悔しさ、苦しみ……。

優しさ、慈しみ、愛おしさ……。

この混沌とした心の中で、いろんな気持ちが混ざり合って蠢いてる。

グルグルと混ぜ合わされて、どす黒く広がっていく。

なんだろう?

何かが顔をもたげる。

どす黒い混沌の中で、何かが生まれる。

ああ……これは……!

ポロロロン……。

最後の音を奏でて……。

ゆっくりと指を離す。

ピアノから視線を逸らして、二人に合わせると、

ガンディア公が涙を流しているのが目に入る。

「え……ガンディア公……?」

僕が起ち上がるのと同時に、あいつがガンディア公を抱きしめた。

「どうした?マサキ。」

優しい声音。

「なんか……すごく……。」

「すごく……?」

「切ない……ショウ君のピアノ……切なくて……。」

ガンディア公はあいつの肩に手を掛け、体を離すと、僕の前に立つ。

見上げるほどの背の高さ。

涙に濡れたその顔が、僕に近づく。

突然、僕をぎゅっと抱きしめる。

「ああ、君は一人じゃない。兄さんも僕もいる。

 この屋敷にも君の味方はいっぱいいる。大丈夫。大丈夫だから。」

優しい優しいガンディア公。

でも……僕は気づいた。

僕の心の中で生まれたもの。

どす黒い混沌から生まれたもの。

それは…………嫉妬だ。

僕はガンディア公に嫉妬してる。

何不自由なく暮らしているから?

何も知らずに幸せでいられるから?

優しさだけでどうにかなると思ってるから?

僕は父さんと母さんを失ったのに、ガンディア公には両親も優しい兄さんもいるから?

違う。

あいつのあの、柔らかい笑顔を独り占めしてるからだ!

あいつの優しさを一身に受けて輝いているからだ!

僕は……、僕は……。

あいつに……。

僕は、ガンディア公を振り払って走り出す。

力任せに扉を開け、廊下を走る。

ああ、なんて愚かなんだろう。

父さんと母さんの敵。

これからも、何人もの人々を傷つけるであろう、あいつ……。

あいつに……

僕は……優しくされたかったんだ……。

ガンディア公を見つめるみたいに、柔らかく笑いかけて欲しかったなんて……。

いつの間にか流れていた涙は、目尻からこめかみに移る。

手の甲で拭って、走り続けて……。

廊下を曲がると、ドンと誰かにぶつかった。

「ご、ごめんなさい……。」

僕は顔を上げず、走りさろうとする。

「……ショウ様?」

声に、振り返ると、ジュンが当惑顔で僕を見てる。

ジュンの巻き毛が揺れて、僕の顔を覗き込もうとする。

僕はジュンの胸にしがみ付いた。

堪えようのない思いと涙を、どうにかして欲しかった。

ジュンは優しく僕を抱きしめて、背中をトントンと叩く。

「泣きたいだけお泣きなさい。ショウ様はまだ子供なんだから。」

僕は、ジュンの胸で声を上げて泣いた。

泣きながら、あいつの胸で泣いたことを思い出す。

あいつは……どんな気持ちで僕を慰めてくれたんだろう……。

どんな気持ちで僕を抱きしめてくれたんだろう。

僕は……あいつにとっていったい何?

あいつは……僕にとっていったい何?