幼い頃はいくつか習い事をしていましたが、一番記憶に残っているのが、とある英語教室に通っていたときのことです。
その英語教室は、もちろんテキストもあったのですが、どちらかといえばアドリブ形式の授業が多く、インディアンの歌を唐突に歌わされたり、部屋の中にある物を急に英語で言わされるなどといったことが日常茶飯に行なわれていました。
インディアンの歌も「♩ワンリトル、ツーリトル、スリーリトル、インディアン」などと日本人丸出しの発音ではダメ出しを喰うので、「♩ワンリロ、トゥーリロ、トゥリーリロ、インディアンヌッ」と、必要以上の巻き舌とアクセントで歌わねばなりません。
人前で歌うだけでも充分恥ずかしいのに、巻き舌とアクセントまで付けなければならず、内向的な日本人にはハードル高めです。
そうかと思えば、先生(当時30代前半の女性)がいきなり「これは何!?」とテンション高めに自らを指差すので、わたしが「ミス・イザワ?(←先生の名前)」というと「ノノノノ!ペンダーン!」
なんと、先生は、自分が胸元につけているペンダントを指差していたのです。
また、ミス・イザワはちょっとヒステリックなところがあり、生徒たちが言うことを聞かないと激怒。
年端もいかない6才~9才くらいの幼児たちが、ヒステリックな女教師に切々と怒られるという、大変シュールな空間が生まれるのです。
このように、毎回いろんな意味でスリリングな授業が繰り広げられ、ついていけない生徒たちは次々と脱落。
最終的にこの英語教室は潰れました。
記憶に残っているのは、ヒステリックなミス・イザワの存在と、人生において何の役にも立たないインディアンの歌のみ。
決して安くはない月謝を親に払ってもらいながら、こんな結果しか出せませんでした。
『日本の英語教室で日本人に教わっても英語は身に付かない』ということだけは、身をもって体感したので、もしかしたらこれは壮大な情操教育だったのかもしれません……。